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2007.5.23(水)更新  美・博ピックアップ
美・博ピックアップ
朽ちた姿に込めた思い

サトエ記念21世紀美術館
「歿後10年 玉之内満雄展」
 枯れて色を失ったヒマワリと、ヨーロッパの古城。埼玉県出身の玉之内満雄(1929〜97年)は、この二つのモチーフを描き続けた洋画家だ。初めは執拗(しつよう)に塗り重ねた粗いタッチで農村や廃船などを描いたが、渡仏を機に作風が大きく変化。細密な写実描写で空虚さを際立たせた架空の室内風景を作り上げた。初期の作品から、細部まで描き尽くす晩年の濃密な世界に至る軌跡を油彩約60点で紹介する。(7月8日まで)

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「車と樽など」(56年)。東京で教師をしていた頃は築地の風景をよく描いた。

「秋色・水辺の古城」(97年)。亡くなる直前に発表した作品。

 花と絵のある室内(90年)

 納得のいく「枯れ方」をさせるため、自宅のそばに畑を借りて30年近く育て続けたほど、ヒマワリは玉之内にとって思い入れのあるモチーフだった。68年から1年ほどフランスに滞在した時も、枯れたヒマワリを描いてサロンに初入選する。咲き誇る花ではなく、朽ち果てた姿こそが彼の心をとらえた。フランスで新たに「見つけた」のも、往時の輝きを失った古城だった。

 円熟期のこの作品では、二つの主要な画題に加え、手前のテーブルに写楽、奥の壁にクリムトの絵を配置。お気に入りの船の模型や当時売られていた缶ビールをプルタブまでリアルに描写するなど、寓意(ぐうい)や遊び心を感じさせるモチーフを至る所にちりばめている。

 絵の中には、人の気配が全くといっていいほどない。丹念に描かれた静物の一つひとつが、謎めいた存在感を放っている。



(2007年5月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

 

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