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2007.5.30(水)更新  アートな仕事人

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虫害研究
 
作品覆う「小さな影」追跡
日本画修復
壁際や作品と作品のすき間など、怪しい場所をチェックしていく=神奈川県の平塚市美術館で。
 家屋への被害でおなじみのシロアリに、シバンムシやヒラタキクイムシ……。絵画の額縁をぼろぼろにし、書籍をシミや穴だらけにする害虫たちは、どんなすき間からも入り込む分、泥棒よりもやっかいな存在だ。

 文化財虫害研究所の農学博士・山野勝次さん(72)は、「小さな侵入者」を追い続けて50年。依頼のあった施設に赴き、収蔵庫に虫のフンや抜け殻などの痕跡がないかを調査。粘着トラップをしかけて2週間後に回収し、薬剤による燻蒸(くんじょう)などが必要かどうかを報告書にまとめる。

 「以前は被害が見つかってから対策に乗り出すことが多かったが、今は予防に重点を置く『総合的害虫管理』という考え方が主流です。低温処理や二酸化炭素処理など、燻蒸以外の防除方法の研究も進めています」

 作品はもちろん、環境や人体への影響を考えれば、ただ定期的に燻蒸をすればいいわけではない。まず調査をし、結果をふまえて必要最小限かつ効率的な方法で害虫から作品を守る。学芸員などを対象にした研修会で、害虫防除についての認識を広めることも欠かせない。

 危険は思わぬところに潜んでいる。以前、海外の美術品の巡回展が行われた時のこと。最初の会場で絵画の額縁から虫のフンらしきものが見つかった。調べた結果、日本本土にはいないダイコクシロアリの被害が判明。あやうく害虫まで「全国巡回」するところだった。

 「私たちの仕事は人目には触れません。でも、目には見えないような小さな虫が、とてつもなく大きな被害を生むんですよ」。美術館からの感謝の言葉を励みに、今日もわずかな痕跡に目を光らせる。

(2007年5月30日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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