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2007.8.22(水)更新  アートな仕事人

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複製画製版
 
「名画」の楽しみ方に新風
松岡さん
 床から天井まである拡大サイズの「睡蓮」。画面を3分割して出力。
 大きな印刷機から、少しずつ絵画が吐き出されてきた。印象派の画家・モネの「睡蓮(すいれん)」だ。原画の約1・4倍、一辺約290センチの大迫力。絵の具の盛り上がりや絶妙な色の濃淡は、間近で見ても本物のようだ。手に触れて初めて、その滑らかな紙質から印刷物だと分かる。

 ここは東京・西新宿にあるエプソン販売の専門ラボ。絵画や漫画原画などの複製印刷を請け負っている。国立西洋美術館が所蔵する「睡蓮」を担当したのは、同社の松岡達也さん(34)。原画を撮影したデータをパソコンに取り込み、学芸員の意見を聞きながら、部分的な色使いや全体の雰囲気を調整。ひな型を出力印刷して確認する。打ち合わせ、色調整、印刷を繰り返し、1カ月近くかけてやっと、「睡蓮」は完成に至った。

 松岡さんは、写真・印刷の技術者であると同時に、自身の写真展を開く作家でもある。作り手の思い入れが人一倍分かるからこそ、妥協は許さない。

 「画面ばかり見ていると、色が分からなくなることがあるんです」。そんなときは外に出る。本物の植物の緑は、思い込んでいた緑色とは全然違うと気づく。一枚の印刷紙に作品としての命を吹き込むには、研ぎ澄まされた感性が必要なのだ。自ら茶道や華道を学ぶ姿勢にも、本物への思いがうかがえる。

 美術館は、作品保護のために照度が下げられていることが多い。「でも画家は、暗い建物の中で絵を見て欲しかったわけじゃないと思うんです」。西洋美術館では、「睡蓮」を本館ロビーに展示中。大きな「名画」に遠慮無く近寄り、質感までも体感できる。技術者の感性と審美眼から生まれる複製画は、美術の楽しみ方の可能性を広げる。

(2007年8月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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