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2007.11.14(水)更新  匠の巧

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蒔絵万年筆
 
使って深まる漆の味わい
吉田さん
 曲面への微細な装飾は、集中力と繊細な技を要する
 金粉の繊細な濃淡が描き出す水の流れや山並み、七色に光るアワビの薄貝で作られた愛らしい花々。直径2センチにも満たない漆黒の円筒に、日本古来の花鳥風月の世界が鮮やかに広がる。

 漆芸の代表的な技法を用いた蒔絵(まきえ)万年筆は、約80年前に並木製作所(現パイロットコーポレーション)で誕生した。人間国宝の故・松田権六を招いて立ち上げた作家集団「国光会」では、加賀蒔絵の流れをくむ伝統の技が今も受け継がれている。

 「手から出る脂が漆や金粉を育て、使うほどに味が出るんです」。同会で50年近く制作する吉田久斎さん(66)は言う。左手で持つ筒をわずかに回しながら色漆で線を描き、金銀の粉を蒔(ま)いてゆく。漆のつやと金粉の輝きを引き出し、肌ざわりや耐久性にも心を砕きながら図案を形にする。工程ごとに乾かし、完成までに数カ月を要する。

 実用性と装飾性の高さは国際的に知られ、若い世代にも人気が高い。「いつの時代も素材の美しさをやまと絵の世界で表現することは変わりません」。千年を超える歴史を持つ技は、19世紀に西洋で生まれた筆記具を舞台に美の世界を確立している。

 同会の商品は2万1000円から。吉田さんの作品は東京都中央区京橋2の6の21、「ペン・ステーション」(TEL03・3538・3840)に展示。
蒔絵万年筆

(2007年11月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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