ブルガリアといえばヨーグルト。決まり文句のように連想する人が多いのでは。「ソフィア」の伊藤環シェフ(37)も、1年前まではそうだった。専門はフランス料理。洋食店「ドンピエール」汐留店がブルガリア料理店としてリニューアルするのに備えて、初めて現地を訪れ、見方が変わった。
「外食文化があまり発達していないので、料理のほとんどが家庭料理。でも、とにかく肉をいろんな形で食べますね。ひき肉にしたり、野菜と煮込んだり。ハーブも多用します」
「カヴァルマ」は、肉と野菜とハーブを煮込み、オーブンで焼いた素朴な料理だ。家庭によって味付けや具材は違うが、「向こうの野菜は味がしっかりしているから、水から煮るだけで料理として成立する」と伊藤さんは言う。
この店のカヴァルマに入っているのは、豚肉、タマネギ、マッシュルーム、パプリカにトマト。タマゴを落とし、クミンやトウガラシ、日本では手に入りにくいハーブ「チューブリッツァ」などを使って、少しスパイシーに仕上げている。現地の味の完全な再現ではなく、より洗練された、レストランのメニューとしてふさわしい味わいを目指した。ブルガリア人スタッフのブラディミル・ジュルジェフさん(27)も、「家で食べていたカヴァルマより、この店のものの方がおいしい」と笑う。
ブルガリアは今年欧州連合(EU)に加盟した。食業界も花開きつつある。ブルガリア人スタッフが帰省みやげに買ってきた料理の本を見ると、新しい料理が少しずつ生まれていることに気づくそうだ。
「ソフィア」では今、ヨーグルトソースで食べる地鶏など、新しいメニューに挑戦している。その味は、スタッフや常連のブルガリア大使館の職員にも好評だ。
自分たちの「新ブルガリア料理」が、本国に逆輸入されて人々に愛されること。それが伊藤さんの夢だ。