「これ、何のジュースか分かります?」。グラスを持って問いかけるのは、川崎にあるペルー料理「インティライミ」の店主・宮平ローサさん(59)。見た目は深い紫色でブドウのようだけれど――答えは紫トウモロコシだった。
香菜を使った緑色のチキンピラフや、黄色のソースが鮮やかなゆでたジャガイモなど、ほかにも色とりどりの料理がメニューに並ぶ。見た目だけでなく味の方も、酸っぱさ、辛さ……と変化に富んでいる。「ペルーは移民の多い国。アフリカ、スペイン、中国、日本などの文化が混ざり合った『クリオーヤ料理』が店の味なの」
この料理は、広い国土で採れるさまざまな食材を使う現地の伝統的な「食」に、移民の持ち込んだ食文化が加わり発展したものだ。
自身も元は日系移民。沖縄の中学を卒業した年に、家族でペルーに移住した。祖父母の代からの家業だったパン屋を開き、約30年。青春を過ごし、慣れ親しんだ土地だったが、経済の混乱が続いたため90年代初めに帰国した。そして始めた今の店は10周年を迎えた。
クリオーヤ料理の代表的なものに「セビッチェ」がある。酸味のきいた魚介のマリネだ。生のカジキマグロを切って、唐辛子をベースにした調味料とレモンを合わせたものに漬け、さらにタコやイカ、セロリ、ニンニクを加える。仕上げに炒(い)ったトウモロコシ、ゆでたサツマイモをトッピングすれば、海と山のものが融合するカラフルな一皿ができあがる。ピリッとした辛みがあって、夏には特に食欲をかきたてる。
暑くなってくると、紫トウモロコシのジュース「チチャ・モラーダ」の注文も増える。トウモロコシの甘みにパイナップルとレモン果汁が合わさり、さわやかな味だ。煮出して作るので手間はかかるが、栄養価が高い飲み物として、現地では一年を通して人気がある。「これ一杯だけを飲みに来るペルー人のお客さんもいるの。がんばらなくちゃ」と、宮平さんはほほえんだ。