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2007.7.17(火)更新  味の地球儀@tokyo

 
 メキシコ
ポージョ・コン・モレ ポージョ・コン・モレ
 熱い国のにぎやかソース
 
 
サムさんとルミさん
 マリアッチの衣装を着てメキシコ民謡を歌うサムさん(右)とルミさん=撮影・宗田育子
 夜、大きな帽子をかぶり楽器を抱えたマリアッチ8人ばかりを連れ、思いを寄せる彼女の家の前で愛の歌をささげる。真っ暗な部屋に明かりがともれば、それが「イエス」の証し――。メキシコのロマンチックな習慣、セレナータ。

 「日本でやったら近所の人に通報されちゃって、警官が飛んできたよ!」。サム・モレーノさんがおどける。浅黒い肌に、口ひげ。郷土民謡「ランチェラ」を堂々と歌う姿は、メキシコ人そのものに見える。英語で話しかけられることもしばしば、という逸話もありながら、実は日本人だ。

 60年代初めに日本にやってきたラテン音楽が、当時高校生だったサムさんをしびれさせた。本場の音楽に触れようと、メキシコ、ロサンゼルスと世界を放浪。「サム・モレーノ」は、そのころから名乗っている。

 帰国後、「音楽も料理もメキシコ一色の店を」と、今のレストランを開業した。しかしシェフが代わるたび料理の味が安定せず、閑散とした日が続く。

 窮地を救ったのは、かつてサムさんの「セレナータ」に応えた妻のルミさんだった。店の台所を手伝ううちに料理を覚え、本場で学んでシェフになった。食べ歩いて研究を重ねた自慢の一皿は「ポージョ・コン・モレ(モレソースの鶏料理)」。チョコレートや数十種類のトウガラシ、木の実などを使ったソースは、最初は甘く、それから苦みや辛みがくる。ちょっと忙しい味だが、トウモロコシ粉で作ったクレープのような「トルティーヤ」に包むと、ちょうどいい。

 金曜の夜、店は熱気に包まれていた。サムさんのギターに合わせて、メキシコ人ウエーターも仕事を忘れ、顔を真っ赤にして歌い叫ぶ。テキーラでほどよく酔った客が、勢いよくマラカスを振り上げる。「人生は楽しまなきゃ、っていうのがメキシコの美学」とサムさんは言う。開店からちょうど10年。「いまやっと、その雰囲気が出せるようになったかな」

 【エル・リンコン・デ・サム】
 東京都渋谷区恵比寿4丁目(恵比寿駅東口、TEL03・3442・1636)。午後6時〜11時ラストオーダー。(日)(祝)休み。7時半と9時の2回、サムさんのステージ。「音楽はプレゼント」と、ミュージックチャージはない。ポージョ・コン・モレ1890円。タコのガーリック煮998円。
(2007年7月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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