細い麺(めん)と一緒に炊いたごはん。その上に、スパゲティ、マカロニ、ひよこ豆、レンズ豆までのっている。主食級の炭水化物のオンパレードに一瞬たじろぐけれど、気を取り直してトマトソースと混ぜる。韓国料理のビビンバを食べる時のように、ためらわずに思いっきり。そして口に運ぶ――いろんな食感が絡み合って、やがて一つになる、不思議な体験。ソースの上のフライドオニオン、そしてニンニクとホワイトビネガーの風味が食欲をそそる。
「コシャリは、日本のラーメンみたいなもんですね」と、マゲド・シャラビィさん(45)。エジプトの代表的な庶民の味で、「給料日前によく食べるんですよ」。素材の下ごしらえに手間がかかるため家庭料理というわけにもいかず、首都カイロにはあまたの専門店がある。そのくせ高級料理店ではまずお目にかかれない。そんなところもラーメンそっくりだ。
日本人にはなじみのないエジプト料理のレストランを、シャラビィさんが始めたのは5年前。もとはカイロの旅行会社に勤めていたが、観光旅行でやってきた日本人女性と縁あって結婚。2人で苦労して東京に店を開いた。
ナイル川の豊かな自然の下で豊富な野菜がとれるエジプトは、野菜そのものの味を生かすため、シナモンやナツメグのような辛くないスパイスを使った料理が多い。だから日本人の口に合うはず、とシャラビィさんは確信している。エジプトが発祥とされるモロヘイヤのスープも、独特のねばり感に、ニンニクと塩味が効いていて、ご飯に合いそうな味だ。
シャラビィさんは店で、お客さんに気さくに話しかける。ベリーダンスのショーや、中東では一般的な「水たばこ」も用意している。店に入った瞬間に、エジプトの雰囲気を感じてもらいたい、という。「ピラミッドやスフィンクスのように、エジプトといえばコシャリ、と言われる日がくればいいですね」。そんな夢を持っている。