巨大なバナナに似た果物、里芋の何十倍もあるようなイモ−−。ちょっと見かけない食材が厨房(ちゅうぼう)に並ぶ。「全部、ナイジェリアから直接仕入れています」とオニェジェクェ・オケシュクさん。
メニューを広げると、さまざまな種類のスープに目を奪われる。納豆のように糸を引く木の実を使った「オボノスープ」は、粘り気のある見た目とは裏腹のマイルドな味で、柔らかなゼリーにくるまれたような具が、のどをツルツルと通っていく。特産の苦い野菜を入れた「ビタリーフスープ」は、一味唐辛子の強烈な辛さも加わる。いずれも牛のホルモンとヤギ肉、干し魚を入れて煮込む。汁はわずかで、具だくさん。メーンの具は同じでも、強い風味の野菜やスパイスを足すことで、全く別の味になる。スープが主菜というナイジェリアならではの多彩さだ。
すりつぶしたカボチャの種を使った「エグシスープ」は、母国で最もよく食べられているという。干し魚の強い香りに、一瞬みそ汁を前にしたような懐かしさを覚えるが、後味はかなりスパイシー。そのギャップは新鮮だ。
スープには、ナイジェリア特産のヤムイモの餅を添える。食感は上新粉の団子に少し似ている。味は淡泊だが、ほんのりとした甘みがあって柔らかい。
物珍しさに目移りするが、辛さや苦みの強いものもあり、日本人にとっては好みが分かれるところ。「初めての方には、トマトシチューをまずお薦めします」。ハーブを加えてじっくり煮込んだ一品で、癖がなく食べやすい。
オニェジェクェさんが腕をふるうレストラン「グリーン・ビュー」は、母がナイジェリアで営んでいた店と同じ名前だ。子どもの頃から料理を手伝い、満を持して開いた海外一号店。地元のみならず、近隣の県からも母国人がやってくる。「ナイジェリア人にとって、隣近所は家族同然。皆で食卓を囲むのが、楽しみなんです」。ここは、遠い異国の地で「近所付き合い」の場になっている。