和食の代表のような「天ぷら」は、南蛮料理がもとになっていると言われている。「ポルトガル料理が日本料理のDNAに入り込んでいる可能性はあるよね」。この店を含め国内で15店のレストランを経営する会社の代表、高橋世輝さんが言う。「欧州を旅していて日本食が恋しくならないのは、この国だけです」
タコにイワシ、タチウオなど、日本でもなじみの魚介類をよく食べる。中でも「国民食」と言われるのが、塩漬けの干しダラ(バカリャウ)だ。大航海時代に保存食として重宝され、いまも食習慣として残る。いため物には身を裂き、煮込みには角切りにして使う。細かくほぐしてサラダやコロッケに、切り身はグリルで。さまざまに形を変えて使われ「1年365日、毎日食べられる」と言われるほど、レシピは豊富にある。
その一つ、「バカリャウとシーフードの煮込み」は、エビやアサリ、野菜と一緒にいため煮したもの。アサリから出るダシと塩、オリーブオイルだけのあっさりとした味に、少量のコリアンダーがひきしめ役として加わる。日本人の口に合うようにアレンジしなくても舌になじむのは、バターやクリーム、コショウすらあまり使わない、この味付けにありそうだ。
予約帳はいつも真っ黒という盛況ぶり。1日には、丸の内に4店舗目がオープンした。高橋さんいわく、「ポルトガルのレストランをやってみて分かったのは、ファンが意外と多いってことです」。
店長の桜庭隆之さんも、その一人。会社員を辞め、念願の留学を果たした後、ポルトガルとのつながりを求めて4年前から働き始めた。
留学時代、海辺で魚を開いて干物にしている風景に出会った。「それを炭で焼いて食べるところなんて、日本とそっくり」。ただし、日本酒じゃなくてワインとですけどね、と笑う。料理が終わってくつろぐお客さんには、その頃のアルバムを見せることもある。「話し終わった後に『で、いつ行きますか?』と聞くのが、趣味ですね」