扉を開けると流れ出す、陽気なサルサの音楽。天井にはミラーボール、床は長時間踊っても疲れない柔らかな板材だ。壁一面に、「カリブの真珠」キューバの写真が飾られている。
「日本人は働きすぎ。もっと楽しまなくちゃ」と、ドレケバルデス・ワルフリードさん(39)。キューバ料理店「エル パライッソ」のオーナーシェフを務める。母国の国立料理学校仕込みの腕は確かだが、ここを単なるレストランと見てはいけない。「日本人が興味を持つことなら、何でも提供したい」。輝く太陽と透き通った海、白砂のビーチ。極上の音楽に、数えきれないほどあるという国産ラム酒−−。「人生を楽しむ」ことに関して一流の国からやってきたシェフは、「キューバ人魂を日本に伝えるのが僕の仕事」という。
スペイン語やサルサダンス教室、キューバ音楽のライブなど、毎週イベントが目白押し。食事に来た人も、自然と体が動き出す。「飛び入り参加も大歓迎です」
そんな「パーティー大好き」のキューバ人にとって、一番のご馳走(ちそう)といえば「レチョン・アサード」。豚肉のグリルだ。誕生日や正月など、祝いの席では必ず食卓に上る。バナナのフライや豆ご飯と一緒に食べる。肉とご飯は、ニンニクやタマネギ、カレーの主成分クミンパウダーなどを加えた典型的なキューバ料理の味付けだ。食べてみると、意外にマイルドな風味。ピリッと塩の利いたバナナをかじると、冷たいカクテルがほしくなる。
もちろん、美しく盛られているのは日本仕様。本国では、固まりのまま焼き上げた豚肉も、大皿に盛られたご飯やバナナも、ゲストが自分でよそる。片手にはビール。サルサを聞きながら体を揺らす、ゲストの様子が目に浮かぶ。
幸せになるのは、そんなに難しいことじゃない、とワルフリードさんはいう。「レチョン・アサードとビール、それに音楽さえあれば、僕らは最高にハッピーなんです」