とんがり帽子をかぶったようなタジン鍋。その「帽子」をとると、たっぷりと注がれた白いソースから湯気とともにミントと酸っぱい香りが立ち上る。自家製ヨーグルトのソースで煮込まれたのは、ひき肉をつめたウリ科の野菜、ズッキーニだった。
料理名は「ドルマ」。ナスやトマトなどの野菜に肉や米を詰めてて煮込む。中央アジアから北アフリカまでの広い地域で食べられているが、ヨーグルト味はシリア流だという。
「ズッキーニとヨーグルトは相性がいいため、特に『王様のドルマ』と呼ばれています」
東京・池袋にあるシリア料理「パルミラ」のオーナーシェフ、アルクード・イブラヒムさんの自信作だ。
フォークで崩すと中から粗くひいたマトンと松の実、タマネギがのぞく。皿にとりわけてヨーグルトソースをかけて食べる。ニンニクの香りも混じり合い、口に運ぶ手が止まらない。
ドルマといえば「ラマダン」(断食月)の食卓を思い出す、とアルクードさん。イスラム教徒は約1カ月間、日の出から日没まで食事をとらずに過ごす。朝から手間をかけて用意した料理を夜、20〜30人の一族で囲む。「毎日がパーティーみたいで楽しいんです」
食後には本格アラビアンコーヒーがおすすめ。シリアから輸入する香辛料のカルダモンが入っていて香り高い。細かくひいたコーヒーの粉はカップの底に沈殿するので、上澄みだけを飲む。口の中をさわやかに潤してくれる。
ドルマは野菜、詰める具、煮込むソースの組み合わせが豊富にある。トマトソースで煮るナスやピーマンには細かいひき肉とごはんが入る。具によってソースの味付けもかえる。現在、ドルマを味わうには予約が必要。下ごしらえに時間がかかるためだ。
「ドルマは1人で食べるものじゃない」とアルクードさん。シリアの「大家族の味」を体感できる一品だ。