「アルゼンチンの人は、毎日の食事が牛肉でも平気です」
同国で20年ほど過ごし、横浜・鶴見でアルゼンチン料理「ラ・エスタンシア」を営む知花清全さん(63)はそう話す。
牛肉が安いため、よく食べる料理が「アサード」。放牧で育った脂身の少ない牛のほとんど部位を炭火で焼き、盛り合わせる。アルゼンチン式バーベキューだ。店内は炭の香りが漂う。
現地で食べていたような牛肉料理を日本にも広めたいと、2年前に店を開いた。看板メニューにアサードをおいた。
作り方はいたってシンプル。牛肉に塩をふり、10分ほど置いた後、塩を落として焼くだけ。約2時間、じっくりと時間をかける。肉はほどよい弾力があり、かみしめると味わいが増す。日本でふだん食べる焼き肉やステーキとはひと味違う、濃厚な牛肉の香りとうまみが特徴だ。
「日本の牛肉はおいしいけれど、毎日は食べられない」と南米人は言うのだと、知花さん。
アサードにもう一つ欠かせないものが、「腸詰め」。店でも豚の血で作った「モルシーリャ」が添えられる。
赤黒い色の太いソーセージで、ナイフを入れると、ほろほろとほどけてしまうほど中身は柔らかい。レバーにも似たまったりとした舌触りとコク。これに、細かく刻んだ豚の耳がコリコリとした食感を加える。
厨房(ちゅうぼう)では、スペイン語が飛び交っていた。かつて南米に移住し、日本に戻った仲間が料理を担当する。それぞれの得意料理を集めたため、ボリビア、ペルー料理もメニューに並ぶ。客の約7割が南米帰りの人々で、味も見た目も「本場と同じだ」と、懐かしんで食べるそうだ。
アルゼンチンの夕食は夜9時ごろから始まり、真夜中までのんびりとるのだという。閉店後も近所の親類が集まり、現地さながら、夜中まで店にあかりがともる。