東京・渋谷にあるチェコ料理店「カフェano(アノ)」の看板料理は、現地のレストランではあまり見かけない家庭料理「ブランボラーク」だ。「チェコの普段の生活に触れて欲しい」というオーナー森摂さん(44)の思いがある。
すり下ろしたジャガイモを、小麦粉、卵、ニンニク、牛乳などと混ぜ合わせて焼く、日本のお好み焼きのような料理だ。
多めの油で揚げるようにするため、外はカリッと、中はモッチリとしている。粗めにおろされたジャガイモの食感が素朴で、マジョラムなどの香辛料が効いている。「初めて食べるのに懐かしい味がする」と評判は上々だ。
同国では、ソーセージや卵、ホウレン草などを入れて昼食にしたり、チェコ風シチュー「グラーシュ」と一緒に食べたりする。日々の食卓にのぼるおふくろの味だ。「気取らないチェコ人のイメージそのもの」と、同店で働く女性スタッフ(26)。ただ、最近は「手間がかかる」という理由で、家庭では作られなくなっているという。
食材のジャガイモはチェコ料理に欠かせない。2人いるチェコ人シェフの1人、マーティン・フィッシャーさん(25)は「日本人にとってのコメみたいなもの」と説明する。
名物の蒸しパン風「クネドリーキ」の原料も小麦粉かジャガイモ。マッシュポテトもパンやご飯のような食べ方をする。
「お母さんは、マッシュポテトが冷えないように、鍋ごとベッドの中に入れていました」
同店では、料理教室やチェコアニメ上映会を定期開催している。店内にはチェコの操り人形が飾られ、棚には客の土産の古い切手や地図などが置かれていた。2階ギャラリーではチェコ製民芸品なども扱う。
「ここがチェコを愛する人たちの拠点になってくれればいいと思う」。森さんは、店をチェコ文化への「入り口」と考えている。