「いま、食べてる!っていうダイレクトな実感。これがアメリカ料理だよ」。カウンターの中で、オーナーの直井陽樹さん(70)がにやりと笑った。
来年40周年を迎えるアメリカ料理店「ハニービー」。オープン時からの同じ味を守るハンバーガーは、直井さんが身をもって学んだ、アメリカの味だ。
戦後の食糧難のころ少年期を過ごした直井さんは、「基地で働けば、腹いっぱい食べられるんじゃないか」と、横須賀の米軍基地に職を求めた。17歳だった。ウエーターから始まり、夜食専門の料理人に。「4人くらいで、サンドイッチを一晩で千個も作るんだよ。全く、けた違いだったなあ」
働きながら、アメリカ式の素材の使い方や料理の仕込み方、そして「食べ物への考え方」を学んでいった。「実用的でシンプル、素材の味を生かす。これが基本だね」。素朴ながらもボリュームも大切な要件だ。
その最たる食べ物が、ハンバーガーである。
バンズの中身は、塩コショウで味付けしたパテと、スライスオニオン、トマト、レタスの野菜類。ソースなどは一切かけない。素材の味をじっくり楽しんでもいいし、カウンターに置いてあるトマトケチャップやマスタードをかけてもいい。シンプルなハンバーガーを客自身が「好みの味」にして、がぶりとかじりつく。
鉄板でこんがり焼いたバンズのカリッとした食感。レタスは食べやすいように千切りにした。一個一個、手で丸めているというパテは、肉汁がたっぷりなのに柔らかすぎず、しっかりした肉の味がする。一度に食べているのに、ひとつひとつの素材の味がはっきりとわかる。
今やハンバーガーは身近な食べ物になった。いろいろな食材をふんだんに入れた高価なハンバーガーも人気だ。しかし、直井さんは昔ながらのシンプルさを貫く。「それがアメリカのハンバーガーのあり方なんだ」