「サンタのふるさと」フィンランドには、日本のおせちにあたるクリスマスの定番料理がある。豚肉のハム、トナカイや鹿の肉と野菜のオーブン料理、塩漬けのサケ……。同国の児童文学「ムーミン」シリーズをテーマにした東京都文京区の「ムーミンベーカリー&カフェ」で、毎年この季節に売り出すクリスマスパン「ヨウルリンプ」もその一つだ。
焦げ茶色のドーム形をしたライ麦パンで、雪に見立てたココナツパウダーが振りかけられている。かすかな酸味と糖蜜の甘みに柑橘(かんきつ)系のハーブが香る。ぎっしりとして食べ応えがある。
同店のプロデュースをする池田裕之シェフ(47)は「このパンはフィンランドの気候や食生活に実にあっている」と話す。ライ麦は食物繊維が多く、同国の中でも特に肉をよく食べる北のラップランド地方には欠かせない。また、酸味が食欲を増進させる。
クリスマス料理の目玉は、豚肉のハムだ。現地では、各家庭でキロ単位で肉を買って作る。それを塊ごとテーブルにのせ、各自切り分けて食べるという。
クリスマスの妖精の置物やツリーのタペストリーと、店はクリスマスムード一色。21日から5日間のクリスマス限定特別コースのメーンは、このクリスマスハム。ハーブの香りをつけた豚肉にパン粉をつけ、じっくりオーブンで焼く。口の中で肉がほどけるほど柔らかい。
池田さんは2度、冬のフィンランドを訪れている。11月末にはクリスマスシーズンが始まる。家々の前には小さなかまくらがあり、中にロウソクがともされていた。
ヘルシンキの老舗(しにせ)のパン屋で伝統的なパンづくりについて学び、ラップランド地方にある民宿の管理人の「ミルカママ」から家庭のパンや伝統料理について習った。ミルカママは、ゲストのために毎朝石釜でパンを焼いた。歓迎の気持ちが伝わってきた。池田さんは「そんなあったかいパンを作っていきたい」と話す。