店舗は築約80年の日本家屋。オーナーシェフのマーカス・イップさん(44)が自ら壁を塗るなどして改築した。
中国系3世のオーストラリア人。父は中国系、母はインドネシア系、友人や隣人は欧州系という環境は「移民の国」ならではだ。
オーストラリアには、カンガルーやトカゲなどを使う先住民アボリジニーの「ネイティブ料理」があるが、現在、料理店の主流となっているのは「モダン料理」。移民により、さまざまな国の料理が混じりあって生まれたという。各国の食材を用い、素材をいかすように味付けや調理法が工夫され、進化している。
「食材を合わせるためには経験が大切」とイップさん。料理に使う食材がその「祖国」でどのように調理されているのか、日々経験を積み重ねることで学び取っていく。さらに、別の国の食材を加えては、味を調和させていく。
「ラムチョップ」は、オーストラリア人にとってなじみの深い料理だ。「朝食として出たことがあるくらい」とイップさんは笑う。
骨の部分を持ち、かぶりつく。肉は柔らかく、甘酸っぱい梅のソースがよく合う。ラム特有の臭みがなく、かみしめるごとに肉の凝縮された「うまみ」が口中を満たしていく。
ラムはどうも苦手、という人がいる。イップさんにはその気持ちがよく分かる。アジア系の祖父母は、独特の臭みのため、ラムチョップを嫌っていた。
肉の下処理をきちんとすれば、ラムもおいしく食べられる。ソースを梅にしたのは、日本人になじみのあるものを使えば食べやすいのでは、と思ったからだ。「それに、僕自身が幼い頃からよく知っている食材でもあったので」
発展を続けるモダン・オーストラリア料理はいま、成長期を経て成熟期に入っている、とイップさんは言う。
「オーストラリアの素晴らしい食材を、もっと洗練された形で紹介していきたい」