ロシア料理店の冬は格別忙しい。ボルシチなどのスープや、キノコをたっぷり使ったつぼ焼きなど、ホカホカと体が温まる料理がそろっているからだ。
東京・国立にある「スメターナ」。店主の星野行由さん(47)は、新宿にある老舗(しにせ)ロシア料理店の厨房(ちゅうぼう)で10年以上修行を積んだ。3年前、妻と今の店を始めた。
メニューを見ると、その数40種以上。聞き慣れない名前も多いが、「素朴な材料を使ったシンプルな料理が多い」と星野さん。
シベリアが発祥とされる「ペリメニ」はロシア風水ギョーザ。香草「ディル」をかけ、サワークリームで味わう。コーカサス地方でよく食べられるラム肉の串焼き「シャシリク」。ロシアではレストランはもちろん、週末を過ごす「ダーチャ」と呼ばれる別荘で、バーベキューのように楽しむのだという。
広大な国土に多民族が暮らす国ならではの、地方色豊かな料理の集まり。これが「ロシア料理」の特徴のひとつだ。
現地ではパーティーを長時間かけて楽しむため、前菜の種類が豊富にある。その前菜を乗せたり、包んだりするのがロシア風クレープ「ブリヌイ」だ。
小麦粉、卵、牛乳にイースト菌を入れて発酵させた生地に、塩と砂糖で味付けし、薄く焼く。サワークリームを塗った上にイクラ、ニシンの酢漬け、「カプスタ」というキャベツの漬物などを合わせる。
イクラをのせて食べてみると、塩味とクリームの酸味、生地のほんのりとした甘みの相性がいい。ふわっと軽く、食感はもっちり。次から次へといただける。「パーティーでも山盛りで用意される」と星野さんは話す。
ブリヌイは太陽の形をかたどったといわれ、春を告げる伝統的な祭り「マースレニツァ」では必ず食される。
にぎわう店の中、まだ遠い春を思いながら味わうのも、一興かもしれない。