「プロスト(乾杯)!」。ビールグラスを打ち鳴らす音があちこちで聞こえる。東京・六本木の「ベルンズ バー」。母国ドイツから大工を呼び寄せ、クナイペと呼ばれる居酒屋の風情をそっくり再現した。
バーカウンターには陶器のビールサーバーが4台並ぶ。オーナーのハーグ・ベルンドさん(46)は、店内を「64平方メートルのドイツ」と呼ぶ。
ドイツ南部の都市バーデン・バーデンで小さなホテルを営む家庭に育った。大学卒業後、商社や旅行会社に勤め、出張で何度も東京を訪れた。その度に樽(たる)から注ぐ生のドイツビールを出す店を探したが見あたらず、もの足りなさが募った。「本物のドイツビールを日本人にも味わってほしい」。この思いが店を始めるきっかけになった。
主にドイツ南部で醸造される小麦ビールにおすすめのつまみがミュンヘン名物の白いソーセージ「ヴァイスブルスト」だ。プレッツェルも添えるのがおきまりの組み合わせ。子牛肉を使ったバジル入りのソーセージは淡泊な味だが、はちみつ入りの甘いマスタードをたっぷりつけることで味が引き立ちまろやかさが加わる。常連客に「ミュンヘンでも食べられないくらいおいしい」と言わしめる人気メニューだ。
ソーセージにナイフで縦に切れ込みを入れ、皮からはぎ取って食べる。硬い皮は残す。食べ慣れた現地の人は、ソーセージを手に持ち、中身をチュッと吸い込むようにして食べる。これが粋な食べ方なのだという。
94年の開店時には、新しいものに抵抗感を持つドイツ人はなかなか足を運んでくれなかった。やがてドイツ大使館職員や会社社長らが、本格的なドイツ料理を懐かしんで集まるようになった。「親から受け継いだ自分の舌には百%の自信があった」と笑う。
「本国そのままのクナイペ(居酒屋)だから、日本人にはドイツの食文化を、ドイツ人にはふるさとのやすらぎを提供できます」