アフリカ大陸の最北端。目の前にひろがる地中海の向こうには、イタリア・シチリア島がある。農作物が豊富にとれ、魚介類や肉類も様々。トマト、ガーリック、ハーブ、オリーブオイルを多用する。イタリア料理に近いようだが、中東経由で伝わったとされるターメリックなど数種のスパイスを加えると独特の味になる。
東京・原宿駅に程近い、チュニジア料理店「ハンニバル ドゥ」は、現地の料理をほとんど網羅しているといっていい。「料理は、全部合わせると2千皿になります」と、オーナーシェフのモンデール・ジェリビさん(38)。手にする大きな黒板には細かい字でぎっしりとメニューが並ぶが、これもほんの一部だ。
多種多様な料理がある中、最も伝統的とされるのが「クスクス」。長い歴史の中で様々な国の影響を受けたが、この味は、北アフリカに住む先住民族ベルベル人が、かたくなに守ってきた。小麦粉をこね、網でこす作業を小さい粒になるまで何度も繰り返す。できあがりは、米粒の3分の1くらいだが、れっきとしたパスタ。
チュニジアでは、ラムやチキンと一緒に、大きめに切った野菜、スパイスなどを煮込んだトマトベースのスープをかけて食べる。スープのうまみに包まれたクスクスの斬新な食感は、何度も口に運びたくなる味わいだ。
チュニジア風春巻き「ブリック」も人気メニューのひとつ。中身はジャガイモやツナ、チーズなどのペーストと半熟卵。現地では、この食べ方で結婚相手の家柄を判断する風習もあるという。ナイフもフォークも使わず、卵をこぼさないようにすすりながら食べるのがマナーだが至難の業だ。
「チュニジアでは手間をかけた料理ほど、もてなしの気持ちが大きいとされる。だから仕込みには時間をかけます」。陽気な雰囲気を漂わせながら定休日も仕込みにあてる職人肌。「チュニジアンブルー」が基調の店内で、仕込みは続く。