見渡す限りコーヒー農園が広がるコロンビアの片田舎。食卓には朝から煮豆の混ぜご飯に、こんがり焼いたステーキ、そして牛乳たっぷりのショコララテが並ぶ。
「もちろん、アレパもね」。コロンビア料理店「ラ・ブラスカ」のスタッフ、フランシー・ヘレラさん(39)は幼少期をおばが営む農園で過ごした。
アレパは、オーブンで焼き上げた薄焼きのパンだ。店で出す料理に必ずといっていいほどついてくる。トウモロコシの粉に水を加えただけの素朴な味で、チョリソーなど肉との相性もいい。トマトと長ネギのいり卵を上にのせたり、スープに浸して食べたり。「農家の人たちはよく働くから、いっぱい食べるの。ご飯があってもアレパは欠かせない」
粉は乾燥トウモロコシをお湯に浸して約1時間、軟らかくなったところでミキサーにかけて作る。戻し汁に牛乳と砂糖を加えれば栄養たっぷりのドリンクになる。これをコーヒー豆の摘み取り作業に追われる大人たちのもとへ届けに行くのが、ヘレラさんの日課だった。風が吹き抜ける木陰で飲む1杯が、強い日差しでほてった彼らの体をいやした。
もう一つ欠かせない料理が、トウモロコシ粉の皮で作った揚げギョーザのエンパナーダスだ。
昨年6月、サッカーの日本対コロンビア戦が行われた埼玉スタジアム近くで売り歩いたところ、応援に来たコロンビア人が競って買い求め、用意した700個が瞬く間に売り切れた。「毎日当たり前に食べていた故郷の味だからね。次はもっとたくさん作らなきゃ」
エンパナーダスをひと口かじると、中から熱々の野菜と肉汁が染み出す。味わっていると、お客が店に入ってきた。席につくなり、メニューも見ずにエンパナーダスを注文した。