東京・新橋の赤レンガ通りに、天狗(てんぐ)のように大きな鼻のお面。その下の扉を開いて中に入ると、竹でできた楽器リンディックの音が軽快に鳴っている。
「偉大なるインドネシア」を意味する店名の「インドネシア・ラヤ」は、新橋に店を構えて51年。店内には、創業者がインドネシア各地で集めた彫刻やお面、絵画などが所狭しと飾られている。「まるでインドネシアの博物館でしょ」。「イタさん」の愛称で呼ばれるスタッフのティルサアビヤンティさん(35)は誇らしそうに話す。
インドネシアの主食は米。パンダンという香草を入れて炊き、米に香りをつける。インドネシア料理は、一つの皿にいろいろな味の料理をのせて、ご飯と一緒に食べるのが一般的。なかでも人気のおかずが「グレイ・アヤム」。ココナツミルクをベースにした、スマトラ地方のチキンカレーだ。
鶏肉とタマネギに、レモングラス、コリアンダー、ターメリックなどの香草とスパイスを入れて炒(いた)め、ココナツミルクを加えて煮込む。ココナツの油が出てくるまで、じっくり1時間。さらに一晩寝かせる。鮮やかな黄色いスープはココナツの風味が濃厚で、刺激はさほど強くない。
「羊や牛の肉でも作るよ」とイタさん。昔はココナツの堅い皮を削って水に浸し、濾(こ)し出してココナツミルクを作っていたが、今では粉末や缶詰が出回り作りやすくなったという。
牛肉を使って、スープがなくなるまでさらに2〜3時間煮詰めた料理が「レンダン・ダギン・サッピ」。もともとは役目を終えた水牛をどうにかおいしく食べようと考え出された料理なのだそうだ。
店は、インドネシアを旅した人や新橋のサラリーマンらでにぎわう。「テリマカシー(ありがとう)」の声がリンディックとともに響き渡る。