肉も魚もクルクルと巻く。ベトナムの食卓に、ライスペーパーは欠かせない。生で、揚げて、蒸して。ホーチミン市出身のスーザン・バウンスさん(56)が営む「タイ タム」のメニューからも、その万能ぶりがうかがえる。
北部、中部、南部と、ベトナムの食には地域色がある。各地の共通点は、米を使った食材が多い、というところ。ライスペーパー、フォー、そうめんのようなブン。「あれも、これも、お米」とバウンスさんは冗談っぽく話す。一年間の生産量は、日本の約3倍にあたる。
バウンスさんの自慢の料理は、つくねをライスペーパーで包む「ネム ヌウーン」だ。つくねの材料は、豚のひき肉やタマネギ、シナモン、八角など。これらをこね、イネ科のハーブのレモングラスを竹串がわりにして焼く。
食べやすい大きさに切り分けたら、レタスやモヤシなどたっぷりの野菜や香草、ブンと一緒に、ライスペーパーでくるむ。ホクホクのつくねと、シャキシャキの野菜の相性がいい。香草の香りが食欲をそそる。
「ベトナムの夕食も一汁三菜。スープ、サラダ、煮物といため物」。同じアジアだもの、とバウンスさんは笑う。
農村部では、朝昼晩、家族で食卓を囲む。都市部でも、家族で夕食を食べられるように、みんなが時間を合わせるという。三世代家族が多く、共働き夫婦に代わり、祖父母が孫の面倒をみる。バウンスさんも「早く孫の世話をしたい。それが私の幸せなの!」。
初めて来店した客がライスペーパーを巻けずにいると、バウンスさんが手を貸してくれる。「でも、2回目からは自分でやって。忘れたら教えるけど」。ハキハキと話す姿は、まるで肝っ玉母さん。食材と一緒に愛情もくるんで。彼女を慕い、月に数回、訪れる客もいる。