アメリカの同時多発テロ以降、はるか遠くのイスラム国家・アフガニスタンの名が日本でよく聞かれるようになった。「メディアが伝える危険なイメージは一面的なもの。アフガンの日常の姿も知ってもらいたい」。そんな思いから、オーナーのハサニ・リーザさん(29)とその家族は02年、アフガン家庭料理店「バーミヤン」を始めた。
駐日アフガン大使館で働く父親について来日したのは16年前。それまでは首都カブールで暮らしていた。アフガンの人々はもてなすのが大好きで、友人や知人を招いては、食べきれないほどの料理で歓迎する。「優しくて、困っている人には手をさしのべる。東北の人の温かさに似ていると思います」。車両の陸送の仕事で全国を訪れているリーザさんの実感だ。
店には母国の食卓でおなじみの料理が並ぶ。作っているのは母親のザイナブさん。たくさん使う香辛料と油は、日本人客には控えめにしている。トマトやホウレン草など野菜をふんだんに使った煮込み料理が多く、「思いのほか食べやすい」と言われるという。
一番好評なのが、現地の言葉で「鍋」を意味する「カライ」。その名の通り、小さな鉄の鍋で作ってそのまま出される料理だ。牛肉とタマネギをトマトソースで煮込み、香辛料のマサラと塩で味をつけて仕上げに卵を落とす。ミートソースに似た味わいで、ピラフのような米料理「パラオ」やナンにつけて食べると良く合う。
アフガン版「おやき」といった雰囲気の「ボラニ」も店のおすすめ。ナンの生地で具を包んで揚げたもので、大きさや具は地域や家庭によってさまざまだ。
カウンターの向こうで料理するザイナブさんを、リーザさんの妻や妹たちが入れ替わり手伝う。親しみやすい料理の陰には、大家族が助け合って仲良く暮らすほほえましい姿があった。