香辛料をたっぷりと使い、舌のしびれるような味つけを言う「麻辣(マーラー)」。中国四大料理のひとつ、四川料理の特徴だ。
「四川料理 川菜館(せんさいかん)」の店内は、鼻の奥を刺激する麻辣独特の香りに満ちている。
「腕のいい料理人ほど、香辛料のいい使い手。料理ごとに味の違いを際立たせる」と経営者の呉思偉さん(45)は話す。その香辛料の代表が山椒(さんしょう)だ。種類はもちろん、粒のままや粉末など料理によって様々に使い分ける。
店で人気の「麻婆豆腐」は四川省の代表的な家庭料理。ニンニクや豆板醤(トウバンジャン)をいためて香りを出した後に、湯通しした木綿豆腐を入れ、鶏ガラスープで煮込む。香辛料と一緒にいためた豚肉をできあがり直前に入れ、仕上げに唐辛子と一緒にいぶした粉末の山椒を振る。
鍋には赤い油が光り、スパイシーな香りを含んだ湯気が立ち上がる。口に入れると、いく種類もの食感と香りが広がる。思ったほどの刺激はないが、後からヒリリとした辛さが追いかけてくる。
料理の生まれた四川盆地は1年を通して湿度が高い。汗をかき、体の中の湿気を追い払って健康を保つという考えから生まれたのだという。
「ここ20年ほどで四川料理店は中国全土で数を増やした」と呉さん。手に入れやすい素材が多く、価格も安い。ほかの中国料理と味がはっきり違うのも理由にあげられる。母国では、飲食店は新しいメニューを次々に出さなければ人気がなくなるそうだ。呉さんは仕入れだけでなく、流行の味を学ぶために毎年、中国各地を訪ねている。
店では四川省出身の3人の料理人が腕を振るう。香辛料は現地から取り寄せる。四川発祥と言われる回鍋肉や担々麺(タンタンメン)など伝統的な味が並び、めくるめくような香りを堪能できる。
=おわり