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2007.8.2(木)更新  秋元 康 ナビゲート 夢中力/ママの思いを絵筆に託して
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秋元康 ナビゲート 夢中力
 
ママの思いを絵筆に託して

油絵   歌手 工藤静香さん

 14歳で芸能界に飛び込んで以来、10代の真っただ中は、仕事に追われる毎日だった。「家に寝に帰るだけ、というのが嫌で。仕事以外に打ち込める何かがほしかった」。絵筆を握ったのは、そんなときだった。

 幼いころから色を紙に描き出すのが好きだった。でも、一度筆を入れたらやり直しがきかない水彩画は苦手。油絵はその点、色を重ねたりはがしたり、いくらでも修正ができる。「表には見えなくても、下に重ねた色が意外な効果を発揮する。何ひとつ無駄にならないのが魅力」

 1990年には二科展に入選、以来毎年「常連」に。ところが、7年目ごろから連続で入選することにプレッシャーを感じ始めた。「大好きな絵を負担に思いながら描くのは違うなって」。10回目の入選を果たしたとき、しばらく筆をおく決意をする。

 その後、結婚、出産と、人生の転機が次々と訪れた。長女が生まれて、久々に無性に描きたくなった。「抱っこしてないと泣く子だったから、左手で抱えながら右手で筆を動かしてた」。そのとき描いたのは、ひし形のような幾何学模様がグラデーションで広がっていく絵。「小さな命がどんどん育って、世界が広がっていくイメージだったのかな」

 アトリエは今、リビングの隅っこ。2人の娘たちはママの大きなキャンバスに興味津々だ。それも、絵がきれいに仕上がっていけばいくほど触りたがる。「これから始める部分には筆を入れさせてます。でも、肝心な部分は寝静まっている間に仕上げちゃう」。翌朝、絵を見た幼い姉妹は「きれーい」「こんなのやりたい!」と大騒ぎ。「そうね〜今度やろうね〜って、言いくるめるの」と、母は少しいたずらっぽく笑った。

 昨年から再び二科展に挑戦を始めた。でも「間に合わなければ来年でいいや」。工藤さんは穏やかな気持ちでキャンバスに向かう。

工藤静香さん
描きかけの絵は海の中に咲く花がイメージ。「まだ6割。これから変わるかも」=東京都目黒区で

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 くどう・しずか 
 1970年、東京都生まれ。87年「禁断のテレパシー」でソロデビュー。「MUGO・ん…色っぽい」「嵐の素顔」などヒット曲を出す一方、女優としても活躍。8月29日、ソロ20周年のアルバム「Shizuka Kudo 20th Anniversary the Best」(ポニーキャニオン)をリリース。8月31日、SHIBUYA−AX(東京・渋谷)で記念ライブを行う。
趣味は自分へのシンパシー

 工藤静香には、色がある。彼女が、アイドルと呼ばれていた頃から、僕は、そう思っていた。普通、アイドルというのは、まだ、無色透明の少女を、プロデューサーが時代に合わせて「色をつける」のだが、彼女の場合は、すでに、色があった。

 僕が彼女と出会った時は、すでに一度デビューをしていたのだが、変に、芸能界の色に染まっていたというわけではない。色とは、個性のことである。未成年だった工藤静香には、強烈な個性があった。彼女が僕の目を見て言った一言を、今でも、鮮明に覚えている。「他人(ひと)のまねは、絶対に嫌です」。ファッションやヘアメークを見てもわかるように、独自のスタイルを築いていた。

 後に、ソロデビューを果たし、圧倒的な存在感で多くの女性ファンの支持を得たのは、その歌唱力や楽曲のよさもさることながら、彼女の生き方が共感を呼んだのだろう。あの頃から、絵を描いていた。油絵というのが彼女らしい。キャンバスに描いたものを否定することなく、さらにその上に、筆を重ねていく。何度も重ねたその色合いが、誰にもまねのできない絵になるように、歌手であり、妻であり、母である彼女は、人生もまた、深い色合いになっている。

 今は、過去の積み重ねの結果だと知っているから、常に輝いていられるのだろう。彼女が好んで使う色、紫は魅力的だが難しい色だ。自分と似ているシンパシーを感じているのかもしれない。

秋元 康さん

 あきもと・やすし
 1956年、東京生まれ、作詞家。4月1日付で京都造形芸術大副学長に就任。
 ◆第92回二科展
 国内有数の美術公募団体「二科会」の美術展で、入選作品を展示。絵画、彫刻、デザイン、写真の4部門。9月5日(水)〜17日(月・祝)(11日(火)休み)、午前10時〜午後6時((金)は午後8時まで、17日は午後2時まで、入場は閉館の1時間前まで)、東京・六本木の国立新美術館。二科会HP(http://www.nika.or.jp)。

 ◆「油絵入門 基本から始めよう」(鈴木輝實著、グラフィック社、1890円)
 初心者向けに、用具の使い方、油絵の具による表現方法などについて解説。

(2007年8月2日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
 

 

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