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2007.8.16(木)更新  秋元 康 ナビゲート 夢中力/時代も雪原もバランス大切
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秋元康 ナビゲート 夢中力
 
時代も雪原もバランス大切

スノーボード   アートディレクター 佐藤可士和さん

 入り口は「音楽」だった。

 大好きなパンクミュージックは、90年代に入り、それまでの「不健康なぐらいがかっこいい」といったアングラなイメージを一新、スノーボードで豪快にジャンプしたり、技をきめたりするビデオクリップで次々と使われるようになった。「最初はスポーツとしての魅力より、音楽との関わりやファッション性など、カルチャーとして衝撃を受けた」

 日本ではまだマイナースポーツだった時代。それでも、真夏にはボードもウエアも一式買いそろえ、シーズン到来を待った。

 雪山に飛び出すと、スキーとは違う「バランスをとる難しさ」に夢中になった。当時は会社勤めにもかかわらず、1シーズンに30回はゲレンデに通った。月曜の朝、そのまま会社に直行したことも。「1本でも多く1分でも長く、限られた時間を150%滑りたかった」

 スノボーは、生活や仕事のスタイルまで変えた。「デザイナーは徹夜で仕事したり夜遊びしたりが普通で、それがいいと思ってた。でもスノボーを始めてからは、時間がもったいないから早起きし、夜は疲れてすぐに寝てしまう。その延長で、ウイークデーも仕事は朝から始め、徹夜はしない。気持ちいいし、何より効率がいいと気付きました」

 自身が手がけるクリエーティブな仕事は、スノボーに通じるという。

 「場所によってまちまちの雪面の状況を瞬時に判断し、最適なバランスをとれると、滑りやジャンプが完璧に決まる。同じように、ものすごいスピードで変化する『時代』と絶妙なバランスがとれたとき、デザインやブランディングは、鮮やかに、かっこよく見えるんです」

 1月に待望の長男が誕生した。「3歳ぐらいになったら、チビボーダーとしてデビューできるかな」。重ねる時とともに、スノボーの楽しみも少しずつ形を変えていく。

佐藤可士和さん
ボード選びで重視するのは機能。「もっとうまく滑れる気がして、毎年新しいのがほしくなります」=東京都渋谷区で

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 さとう・かしわ 
 1965年東京都生まれ。多摩美術大グラフィックデザイン科卒業、博報堂を経て「SAMURAI」設立。SMAP、ユニクロソーホーNY店、国立新美術館、NTTドコモ「FOMA N703iD」など、CI(コーポレート・アイデンティティー)から空間、プロダクトデザインまで幅広く手がける。東京ADCグランプリ、毎日デザイン賞ほか多数受賞。
努力とは呼ばない趣味の汗

 ある雑誌の「お取り寄せグランプリ」の選考会で佐藤可士和が商品を手にしながら、何度もつぶやいていた。「このパッケージのデザインがもったいないなあ。もっと、カッコよくすればいいのに……」。その時、僕は、彼が売れっ子のアートディレクターになった理由がわかったような気がした。

 成功するクリエイターは、目に飛び込むすべてのものに「自分だったら、こうする」というアイデアを持っている。それは、計算ではなく、性だ。地方の小さな店舗の商品のパッケージにまで、反射的にアイデアを思い浮かべてしまう面白がり方が、彼をここまでにした原動力だと思う。心を突き動かすものは、自分にとって面白いかどうか、である。

 「スノーボード」と出会った時も、そうだったのだろう。実際に滑ってみると、イメージ通り滑ることができなくて、寸暇を惜しんでスキー場に通い続けたに違いない。その時も、こう思ったはずだ。「こんな感じで滑りたいんだけどなあ」。頭の中のイメージを具体的にデザインしていくように、雪の上に何度もスノーボードのシュプールを描いて、テクニックを磨いたのだと思う。

 佐藤可士和にとって、アートディレクションとスノーボードは同じアプローチなのだ。いくつもの制約の中で、次々に斬新なデザインを生む彼は、雪質を読むように、時代のコンディションを捉えている。それは、努力というより、楽しみに近いのだろう。

秋元 康さん

 あきもと・やすし
 1956年、東京生まれ、作詞家。4月1日付で京都造形芸術大副学長に就任。
 ◆スノーヴァ溝の口R−246(川崎市高津区、TEL044・844・1181、http://www.snova246.com
 オールシーズン、スノボーやスキーが楽しめる室内ゲレンデ。用具のレンタル、スクールなども。

 ◆EX SNOWBOARD
 スカイパーフェクTV!のスポーツ専門チャンネル「EX SPORTS」(282ch)で放送。一流選手の技、大会やイベントのリポートなどの映像が楽しめる。

 ◆BURTON(東京都渋谷区、TEL03・5738・2777)
 佐藤さんお気に入りのスノーボードショップ。サイト(http://www.burton.com)では、ライダー情報やムービーが見られる。

(2007年8月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
 

 

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