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2007.10.11(木)更新  秋元 康 ナビゲート 夢中力/命の根源求めジャングルへ
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秋元康 ナビゲート 夢中力
 
命の根源求めジャングルへ

探検   東大大学院教授 河口洋一郎さん

 種子島で生まれ、育った少年は、世界地図をながめては、遠いアマゾンのジャングルに思いをはせた。

 「東南アジアの島々をカヌーで転々と渡ってアマゾンまで向かおうか。それとも縄文人のように、北太平洋のアリューシャン列島をつたってたどり着こうか――。毎日、そんなことを真剣に考えてたね」

 夢想家だった少年は成長し、70年代からコンピューターグラフィック(CG)で芸術作品を手がけ、世界の注目を浴びるようになる。

 しかし、そんな河口さんの大学の研究室は、アーティストというより、探検家の部屋。ピラニアの剥製(はくせい)やアンモナイトなどが所狭しと並ぶ。世界の秘境に出かけた思い出の品々であり、証でもある。

 アマゾンで巨大ワニにちょっかいを出そうとしたら、勢い余ってカヌーがワニにぶつかった。グランドキャニオンではクマに遭遇した。「よく考えると結構命拾いしてるなぁ」と、あっけらかんと笑う。そんな危険を冒してまで何が探検へと駆り立てるのか。

 「ジャングルや砂漠などの過酷な環境でこそ、生物は生き残るために進化する。そうした『命の根源』をこの目で確かめたい」

 河口さんの話題は、アマゾンのピラニアから宇宙の銀河系、故郷の海でウツボと格闘したことへと、次から次へと飛ぶ。まるで博物学のおもちゃ箱。だが、不思議と違和感がない。「種子島って、楽園のような自然の中にロケットが飛ぶ宇宙センターがあるし、鉄砲が真っ先に伝来した土地でもある。僕の中では、自然も宇宙も最先端も、すべて同じ次元にあるんです」

 美しくも過酷な大自然の中で感じたインスピレーションが、新たな作品を生み出す活力になる。

 「理想は左手に竹のもり、右手に超コンパクトコンピューターを持ってジャングルに分け入ることだね」

河口洋一郎さん
探検は自然とのサバイバル。「何が起きても生き延びて、生物の進化をこの目で見たいね」=東京都文京区で
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 かわぐち・よういちろう 
 1952年鹿児島県種子島生まれ。東大大学院情報学環教授、CGアーティスト。コンピューターのプログラムで生物の成長や進化を表す「グロースモデル」を82年、国際学会シーグラフに発表し、高い評価を受ける。最近では生き物のように動くスクリーンに代表される舞台映像空間アート「ジェモーション」でも注目される。
趣味は、誰かへと伝染する

 河口洋一郎とは、あるボランティア団体のシンポジウムで知り合った。僕より年上で、大学の偉い先生で、日本を代表するCGアーティストなのに、気さくで、話が面白く、すぐに意気投合した。堂々たる体格と、なんとか原人のような風貌(ふうぼう)は、とても高度なコンピューターを操る人間には見えない。

 「河口さんは、女子高生たちが言う『KY』だからなあ」「『KY』って何?」「空気が読めない」。そんな失礼なことを言っても、彼は、細い目をさらに細くして笑うだけである。実際、まわりの状況を考えない言動に、僕の方がはらはらすることも多い。正直でまっすぐな人なのだ。

 彼と一緒にいると、空気を読む≠ニいうことが、さもしいことのように思えて来る。趣味が、探検? それは、趣味というより、彼の生き方そのものだと思う。未開の地を進むことも探検だが、この現代社会を生きることも探検だ。「秋元さんみたいな仕事をしていると、女優とごはんを食べたりすることもあるんでしょ?」

 KYな彼は、ずかずかと、プライバシーに踏み込んで来る。そのストレートさが、僕は好きだ。複雑な人間関係を頭で計算しながらその場に止まるより、果敢に飛び込んでいく彼が好きだ。

 コンピューターと探検。バーチャルとリアル。相反する二つのものに魅せられた男。いつのまにか僕も、河口洋一郎という秘境を探検しているのかもしれない。

秋元 康さん

 あきもと・やすし
 1956年、東京生まれ、作詞家。4月1日付で京都造形芸術大副学長に就任。
 ◆アジアグラフ
10月12日(金)〜14日(日)、午前10時〜午後6時((日)の展示は午後4時まで)、東京・秋葉原UDX(秋葉原駅)。アジアのデジタルコンテンツ産業発展のため、第一線で活躍する研究者とクリエーターが技術と作品の発表を行う、学術、芸術、展示が一体となったCGの国際的祭典。展示のほかワークショップや講演も(一部要予約)。入場無料。河口さんが代表を務める東大河口チームは、CGに反応してでこぼこに動くふすまサイズ4枚分のジェモーションスクリーンを発表する。詳細は(http://asiagraph.jp)。

(2007年10月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
 

 

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