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2007.12.27(水)更新  秋元 康 ナビゲート 夢中力/マイペースで遠くへ行こう
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秋元康 ナビゲート 夢中力
 
マイペースで遠くへ行こう

自転車   バンドマン 忌野 清志郎さん

 木枯らし舞う空の下を、自転車でさっそうと登場。日本を代表するロッカーに、50歳を過ぎてから「サイクリスト」の顔が加わった。

 老人が吹雪の中を7時間歩き、雪崩で遭難した息子を助け出したニュースに衝撃を受ける。「人間が本来持っている気力や体力を自分は忘れてしまっているのでは」。その思いに駆られ、自転車で東京から鹿児島を目指すことに。「そんなに甘くないと周りから言われたけれど、なんとかたどり着いた」。10日間の走行距離は1400キロ以上。その後も東北や沖縄、ハワイ、キューバなど見知らぬ土地を走り回った。

 「自然の中を走っていると、小動物のような気分になるんです。考え事をしたり、景色を眺める余裕もない。走っていること自体が快感」

 心身を鍛えるなら、ほかにも選択肢はあったはず。なぜ自転車だったのか。「たとえば水泳やサッカーのように限られた空間でエネルギーを費やすのではなく、自転車は同じエネルギーを使って自力でどこかへ行ける。そこにひかれたんです」

 自転車に乗る上でこだわっているのが、LSD(=Long Slow Distance)。ゆっくりと時間をかけて長い距離を走るスタイルだ。

 「自転車と音楽は、一度転がり出したら同じグルーブでずっと続いていく気持ち良さが似ていると思うんです。闘争心むき出しではなく、マイペースに淡々と行くのがいい」

 昨年、喉頭(こうとう)がんを患い半年ほど自転車に乗れない期間があった。筋肉はすっかり落ち、心肺機能も低下。 「再開したら、以前はヘッチャラだった距離でも疲れて足がつってしまい、最初はがくぜんとしました」

 心肺機能の回復は歌にも不可欠なため、今は自転車に乗ることがいいリハビリとなっている。焦らずマイペースに体を作り直し、再び出かけるつもりだ。そう、ゆっくりと、どこか遠いところへ。

忌野 清志郎さん
病気から見事に復活。自転車を再開した8月からの走行距離は1000`を超えた=東京都渋谷区で
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 いまわの・きよしろう 
 1951年東京都生まれ。70年にRCサクセションとしてデビュー。10年連続、日本武道館で公演をする。91年にバンド活動休止後もソロ活動のほか、俳優や絵本の執筆など精力的に活躍。2月10日(日)に日本武道館で完全復活祭、追加公演を24日(日)に大阪、3月2日(日)に京都で開催予定。

http://www.kiyoshiro.co.jp/

ロックとは走り続けること

 忌野清志郎ほど、若いミュージシャンたちに尊敬されているベテランもいないだろう。それは、きっと、彼の音楽性もさることながら、彼の生き方が支持されているのだと思う。彼は、常に、時代の流れの岸から叫び続けている。まるで、河原で練習するアマチュアバンドのように……。

 その志は、プロになり、ベテランになった今も変わっていない。清廉潔白な音楽魂の持ち主である。音楽がすべてであれば、それ以外のものに対する欲が消えるのかもしれない。いつだったか、彼が家族と僕の家に遊びに来たことがある。家族はタクシーに乗って、彼は自転車に乗ってやって来た。帰りも、また、「じゃあね」と言って、家族はタクシーに、彼は自転車に乗って、夜の街に消えて行った。

 「何も、家族とばらばらになってまで自転車に乗ることもないだろうに」と思ったのだが、それが、忌野清志郎のロックなのだ。中途半端はカッコ悪い。臨機応変なんて言葉は、彼には通じない。「自転車って面白いですか?」。僕が聞いた。「最高」。無口な彼が、照れ笑いを浮かべながら答えた。「一番の贅沢(ぜいたく)って何ですか?」「……鍋焼きうどん」。ステージで歌うことが最高なように、自転車に乗って走ることが最高なように、鍋焼きうどんが最高のように、彼は、いつだって、最高な生き方をしている。忌野清志郎の自転車は、休むことを知らないロックだ。

秋元 康さん

 あきもと・やすし
 1956年、東京生まれ、作詞家。4月1日付で京都造形芸術大副学長に就任。
 ◆サイクルスタイル・ドットネット(http://www.cyclestyle.net
 通勤や通学、趣味として自転車を楽しむ人のためのポータルサイト。日本全国のコースガイドやイベントの紹介、サイクリストによるコラムなど、快適なサイクルライフを応援。

 ◆「サイクリング・ブルース」(小学館、1680円)
 昨年発売された忌野清志郎さんによる“自転車愛入門書”。キューバ、九州、四国など国内外の旅の様子を写真と文章で紹介するほか、自転車アイテムやライディングスキルなど実用的情報も。

(2007年12月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
 

 

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