懸賞サイトは朝日マリオン・コム-懸賞 プレゼント、懸賞 応募、懸賞 旅行
2008.3.27(木)更新  秋元 康 ナビゲート 夢中力/道との遭遇膨らむイメージ
秋元康 ナビゲート 夢中力 バックナンバーへ    コラムのトップページへ   

秋元康 ナビゲート 夢中力
 
道との遭遇膨らむイメージ

ウオーキング   演出家・映画監督 堤 幸彦さん

 撮影現場でひときわ目を引く金髪の異才は自称・健康オタク。ウオーキングは、6〜7年前、健康診断で医者に勧められたのがきっかけだった。「でも実際歩き始めたら、当初の意義だの目的だのはどうでもよくなった。単純に歩くこと自体が今は楽しいんです」

 週に3回ほど、空き時間を見つけては気の向くまま都内を5〜6キロ歩く。昼間でも日の差さない薄暗い坂道があったり、古い家並みや超近代的な家があったり。地図では分からない景色が次々と見えてくる。「土地の呼吸や人の営みを肌で感じるのがすごく面白い。狭い道ほど気になってつい入りたくなる路地マニアなんです」と笑う。

 CGを駆使した娯楽作からストレートな青春群像劇まで、手がける映画のジャンルは幅広い。

 「僕は芸術家ではなく『定食屋のおやじ』。目の前に用意できる素材で、中華でも和食でもそれなりにみんなが納得するものを作る」。そう話す堤さんの根底には「リアリティー」を追い求める姿勢がある。重要な要素となるのが「土地」だ。面白い原作であればあるほど、映像化するには物語のイメージを鮮明に立ち上らせる撮影場所が必要になる。

 「歩いていると年に1度か2度、『これはあのシーンにぴったりだ!』っていう場所があるんです。坂道を上ったらぱっと視界が開けて、新宿の高層ビルと東京タワーが一直線上に見えたとか。それはもう、この場所に呼ばれたのかと思うほど感動しますね」。路地をつぶさに歩くことが、映像の世界に生き生きと血を通わせる、新鮮な情景との出会いにもつながっていた。

 「どんなに大規模な作品であっても、映画は人間の営みが基本にあるべきもの。そういう目線はずっと持ち続けていたい」。自分の体一つで感じ取ることを大切にする姿勢が、新しい発想を生み出していく。

堤幸彦さん
ロケ先で新しい土地を歩くのも楽しみの一つ=長崎県諫早市で
このコラムの感想を送る(登場人物の名前を明記してください)

 つつみ・ゆきひこ 
 1955年生まれ、名古屋市出身。80年に演出家デビュー。ドラマ「ケイゾク」「池袋ウエストゲートパーク」「トリック」、映画「明日の記憶」「自虐の詩」など多数の話題作を手がける。今年も「銀幕版 スシ王子!」「20世紀少年 第一章」「まぼろしの邪馬台国」と3本の映画が公開予定。
趣味は、長い人生の寄り道

 30年前、僕は駆け出しの放送作家で、堤幸彦はテレビ番組のアシスタントディレクターだった。TBSの近くの、今はもうない喫茶店で、僕たちは夢を語り合い、数年後、一緒にテレビや映画の制作会社を作った。

 作詞家として売れっ子になり、時代の大きな潮流に巻き込まれ、自分の勉強不足が不安になった頃、僕はニューヨークで暮らすことに決めた。真っ先に、報告したのは、彼だった。駒沢のファミリーレストランで僕の話を聞いていた彼が言った。「僕も行きますよ」。僕たちは、80年代後半、日本での仕事を整理して、ニューヨークで共同生活を始めた。

 今、思えば、あの頃から、彼はマンハッタンをウオーキングしていた。異国の地を歩き回り、そこで瞼(まぶた)のシャッターを切った何万枚もの風景が、彼の脳に記憶されたのだろう。彼の映画やドラマが日本でありながら日本ではないような撮り方をしているのは、その時の影響かもしれない。いや、彼は、街だけでなく、人生そのものをウオーキングしている。誰より、本を読み、映画や舞台を観(み)ていた彼は、いつも、曲がり角の先、路地の突き当たりに面白いものが待ち受けているのではないかと捜していたような気がする。

 ニューヨーク行きに賛同してくれたのも、彼が人生の寄り道を楽しんでいるからだろう。走ってしまったら、見逃してしまうことが多いから。盟友、堤幸彦は今、どこを歩いているのだろうか。

秋元 康さん

 あきもと・やすし
 1956年、東京生まれ、作詞家。4月1日付で京都造形芸術大副学長に就任。
 ◆「アースダイバー」(講談社、1890円)
 縄文地図を手に都内を歩き、見慣れた風景の下に眠る「野生の東京」を探ることを試みた中沢新一さんの著書。堤さんは本書を読んで高輪周辺を散歩した時に、「社寺のある場所はかつての海岸線と一致する」という中沢さんの考察が実感できて面白かったという。

 ◆「包帯クラブ」(ポニーキャニオン、通常版DVD3990円)
 天童荒太さんの小説が原作。監督を務めた堤さんは、原作にはない群馬県高崎市を舞台にすることで、日常への物足りなさや閉塞(へいそく)感を抱える若者の姿を叙情豊かに映像化した。

(2008年3月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
 

 

asahi-mullion.comトップページへ
サイトマップ | 会社案内 | 朝日マリオン・コムとは | 姉妹メディア | 会員規約 | 個人情報・著作権
asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2007 Asahi Mullion 21. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

懸賞サイトは朝日マリオン・コム-懸賞 プレゼント、懸賞 応募、懸賞 旅行