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ほくほく味さんぽ

東銀座<2>歌舞伎座の裏、小さな和菓子店

丁寧に積み重ね、120年超

弾力のある餅と、豆の歯ごたえは絶妙のバランス!
弾力のある餅と、豆の歯ごたえは絶妙のバランス!
弾力のある餅と、豆の歯ごたえは絶妙のバランス! 歌舞伎座裏手の、うっかり通りすぎてしまいそうなお店 陳列数が限られているのは、きちんと作れる分だけを、きちんと売り切りたいから 人気の豆大福が整列する姿は、なかなかかわいらしい 80歳とは思えないほどハキハキとした店主の保坂嘉一さん 手書き文字が味わい深い、昔ながらの包装紙も魅力

 東銀座の味さんぽ、2回目は歌舞伎座の裏に位置する柏屋菓子店です。うっかりすると通りすぎてしまいそうな間口の狭いお店ですが、地元住民から観光客までひっきりなしに訪れます。また、お得意さんへのお土産として買っていくサラリーマンも多いのだとか。

地図 取材中にも、「栗蒸し羊羹(ようかん)一個!」と言いながら訪れた初老の男性が、「包まなくていいから」とその場でポイと口に放り込んでしまうという光景が。地元に愛されているお店なんだなということが、そんなところからもわかります。

 歌舞伎座が開場した翌年の明治23年に創業したという、文字通りの老舗。3代目の保坂嘉一さん(80歳)は、学生時代から先代のお父様の下で働いていたのだそう。40代半ばで店を継ぎ、現在は奥様とふたりで切り盛りしています。ハキハキとした江戸っ子口調は、とにかく「若い!」という印象。

 「おかげさんでね、なんとかやってますよ。忙しく働いてるからじゃないですか?でも大々的にやってるわけじゃなくて、細々と続けてるだけですから。その日その日を積み重ねてったら、120年経っちゃったっていうだけですよ」

 謙虚なことをおっしゃる保坂さんに人気の秘密をたずねてみたところ、とても気持ちのよい言葉が返ってきました。

 「そりゃ、いいお米といい小豆ですよ。小豆は北海道の一等品を使ってますし、もち米も宮城のミヤコガネとかね。それと、丁寧に作ることです。いくら売れるからって、大量生産してたんじゃだめでしょうね。だからうちは、作りすぎないんです。見てもらえばわかるけど、たくさん並んでないでしょ。全部その日に作って、その日に売り切っちゃいますから」

 早朝から仕事を始め、夜までずっと働きづめ。その間にも、一番人気の豆大福(170円)を中心としたお菓子はどんどん売れていきます。

 「夜8時ごろに店ぇ閉めはじめたって、完全に閉まるのは9時でしょ。それに、閉めてからも明くる日の支度があるんですよ。それからご飯食ったり風呂入ったりで、くたびれちゃってね」

 ハードスケジュールで大変そうですが、たぶん、それがパワーの源。これからも、おいしい豆大福を作り続けてほしいなと感じました。

(印南敦史)

■柏屋菓子店

東京都中央区銀座4-11-5
TEL:03-3541-8053
営業時間:午前8:30~午後8:00
休み:土曜・日曜・祝日
奥様と2人で切り盛りしており、ホームページもない昔ながらのスタイル。事前連絡をしたりせず、文字どおりのお散歩感覚でふらっと立ち寄りたい。

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は更新時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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