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アートリップ

モエレ山 
イサム・ノグチ作(札幌市東区)

大地に刻んだ「遊び場」

3方向5ルートから山頂に登れる=谷本結利撮影
3方向5ルートから山頂に登れる=谷本結利撮影
3方向5ルートから山頂に登れる=谷本結利撮影 夕日が反射するガラスのピラミッド「HIDAMARI」=谷本結利撮影

 東京ドーム40個分の緑地が広がるモエレ沼公園。日系アメリカ人の彫刻家イサム・ノグチ(1904~88)が手がけた。一角に標高62メートルのモエレ山がそびえる。10分かけて山頂に着くと、札幌ドームから石狩湾まで、360度札幌の街が広がった。モエレ山はごみと公共残土を積み上げた人工の山だ。

 もとは沼地で、不燃ごみの埋め立て地だった。82年に公園の建設が始まり、88年3月、ある企業家の誘いを受けノグチがやって来る。ごみ山を歩いて、彫刻としての「プレイグラウンド(遊び場)」を造ることで、「人間が傷つけた土地をアートで再生する」と参加を決めた。

 その後、ニューヨークから3度足を運び、11月、84歳の誕生日会で2千分の1の模型を発表した。しかし翌月末に急逝。遺志を継いだ建築家らによって17年後の2005年、完成した。

 「残されたのは模型と数枚の図面だけ。芝の種類や木の植え方、何を決めるにもイサム先生ならどうするか考えた」。ランドスケープデザインを担当した斉藤浩二さん(69)は振り返る。地盤が弱く、モエレ山の造成は4年を要した。均質に芝を張り、内部に排水処理を施し、土が流れないよう工夫した。

 そして今、夏は芝の上を駆け回り、冬はソリ遊び。モエレ山にはいつも子どもの声が響いている。

(永井美帆)

 モエレ沼公園

 イサム・ノグチ最後にして最大の作品。昨年度は約85万人が訪れた。約189ヘクタールにブランコ、シーソーなどの遊具126基、ガラスのピラミッド、最大25メートルまで噴き上がる噴水などが点在する。6月13日(月)、海辺をイメージした水遊び場「モエレビーチ」がオープン。「モエレ沼」の地名はアイヌ語の「モイレペッ」(ゆったり流れる川)に由来する。

 《アクセス》 環状通東駅からバス。札幌駅から車で約30分。


ぶらり発見

初雪

 札幌市の大通公園にはイサム・ノグチの彫刻ブラック・スライド・マントラがある。高さ3.6×幅4メートルで、渦巻き状の滑り台。4~10月には園内各所にとうきびワゴンが登場。トウキビ(300円)やジャガイモ(2個、250円)などが人気だ。問い合わせは北海道キヨスク(011・252・6873)。

 西11丁目駅すぐのせっけん専門店「シエスタラボ」(TEL206・0710)。雪の結晶をイメージしたオリジナルの紙せっけん初雪写真、1080円)は、道内限定でおみやげに最適。札幌駅のJRタワー内、札幌スタイルショップでも買える。

(2016年5月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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