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アートリップ

つまみぐい 
新谷一郎作(鳥取県米子市)

「指」の間に大山くっきり

晴天の日には、はっきりと大山が望める=伊藤菜々子撮影
晴天の日には、はっきりと大山が望める=伊藤菜々子撮影
晴天の日には、はっきりと大山が望める=伊藤菜々子撮影 明地信之作「Hippopotamus(カバ)」は米子駅前にある=伊藤菜々子撮影

 巨大な石の指が、ぷいっと何かをつまんでいるように見える。つままれたのは石の間から見える大山(だいせん)だろうか。

 鳥取県米子市の、どらドラパーク米子にある高さ約4メートルの花崗岩(かこうがん)の彫刻作品だ。1988年の第1回米子彫刻シンポジウムで約40日かけて制作された。タイトルの「つまみぐい」は、市内の小学生のアイデアだ。「作品に愛着を持ってもらいたくて一般公募にしたんです。景色のつまみぐいという発想が面白かった」と言うのは、作者の彫刻家、新谷一郎さん(60)だ。

 彫刻シンポは、彫刻家が野外で作品を作りながら市民と交流し、街づくりを進めようという趣旨で、市民運動を経て始まった。市民参加型の仕組みは「米子方式」と呼ばれ、小説にもなった。「制作中、差し入れをしてくれる人など多くの人が見に来てくれた。完成後も作品の間をくぐったり、腰掛けて弁当を食べたり、自由に楽しんでもらっています」と新谷さん。

 隔年で計10回実施された彫刻シンポは、2006年を最後に幕を閉じ、現在も休止中だ。だが、ボランティアによる作品の清掃活動や学芸員が主催するツアーなどが続いている。

 早朝、犬と散歩しに来た足立充さん(66)は作品に座ってほほえんだ。「毎日ここに来るよ。冬はてっぺんが白くなった大山がきれいなんだ」

(佐藤直子)

 米子野外彫刻

 「米子彫刻シンポジウム」(1988~2006年)で、国内外の作家が制作した作品40点は市内に点在する。JR米子駅前から加茂川沿いをたどって米子港を結ぶ「彫刻ロード」には、井田勝己作「化石の街」や森亮太作「こすもす」など多くの作品が集中している。日本ウオーキング協会の「美しい日本の歩きたくなるみち500選」にも選ばれた。

 《「つまみぐい」へのアクセス》 JR東山公園駅から徒歩10分。


ぶらり発見

あげどら

 どらドラパーク米子の命名権を持つ丸京製菓のどら焼きは、甘さ控えめで人気。JR後藤駅から徒歩15分の直営店、丸京庵(TEL0859・31・0285)で販売する「あげどら」(写真、160円)は、どら焼きに衣をつけて油で揚げた。揚げたては外がカリッと、中はふんわりした食感。栗入り粒あんと粒あんの2種。(火)休み。

 米子市美術館(TEL34・2424)では11月27日(日)まで「米子美形男子図鑑」を開催。昭和を代表する写真家・林忠彦が写した太宰治のほか、植田正治ら写真家によるセルフポートレート、素描などを紹介。320円。(水)休み。

(2016年11月15日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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