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アートリップ

聖フィリッポ西坂教会 
今井兼次作(長崎市西坂町)

長崎の街 見守る双塔

教会の名前は26聖人の一人からとった=桐本マチコ撮影
教会の名前は26聖人の一人からとった=桐本マチコ撮影
教会の名前は26聖人の一人からとった=桐本マチコ撮影 モザイクに使用した陶器には地元住民や料亭「花月」から寄付されたものも=桐本マチコ撮影

 急な坂道を上っていくと、赤や黄色に彩られた二つの塔が現れた。西坂の丘に立つ聖フィリッポ西坂教会。背後の山には墓地が広がり、振り向けば長崎の街が見下ろせる。

 設計したのは、スペインの建築家アントニオ・ガウディを日本にいち早く紹介した、建築家の今井兼次(1895~1987)。陶片モザイクの壁面や曲線を生かしたフォルムなど、ガウディの影響がうかがえる。

 西坂は、豊臣秀吉のキリシタン弾圧により、1597年に外国人宣教師と日本人信徒の計26人が処刑された地だ。教会は、この26人の列聖100年にあわせ、1962年に建てられた。

 高さ16メートルの双塔は、殉教の喜びに地上の人々の喜びが呼応して開かれる「天の門」を表し、窓の形は、天から降りてくるハトの姿を表現。モザイクに使った陶片は、26聖人が歩いた京都~長崎間の窯元から集めた。

 当時、奇抜な外観は人々を驚かせたが「オリエンタルな雰囲気が長崎らしいと、好意的に受け入れられたようです」と、教会に隣接する日本二十六聖人記念館の宮田和夫さん(52)。

 毎週日曜にはミサが開かれ、近年は台湾や韓国から巡礼する信徒も増えているという。

 「キリシタン弾圧と被爆という、痛みの記憶がこの街の中に混在しているんですよ」。教会は、丘の上から街を見守っているようだった。

(秦れんな)

 西坂の丘

 1962年の教会建設時には、今井が設計した「日本二十六聖人記念館」と、彫刻家・舟越保武(1912~2002)制作の26聖人のブロンズ像も建てられた。2012年、日本カトリック司教協議会が日本初の「巡礼所」に指定。  記念館には、「聖フランシスコ・ザビエル自筆書簡」や今年1月に公開した米映画「沈黙 サイレンス」にも登場した聖画「雪のサンタマリア」など約400点を収蔵。

 《アクセス》JR長崎駅から徒歩約5分。


ぶらり発見

ぽっぺん

 長崎駅からバスで約75分の遠藤周作文学館(TEL0959・37・6011)のある外海地区は、代表作「沈黙」の舞台で、「キリシタンの里」ともよばれる。生原稿や遺品、蔵書など約3万点の寄贈・寄託資料を展示する。2018年5月まで企画展「刊行から50年 遠藤周作『沈黙』と長崎」を開催中。観覧料360円。

 長崎市の花、アジサイを絵付けしたぽっぺん(864円)は、息を吹き込むと音が鳴るおもちゃ。「大浦天主堂下」電停から徒歩3分のグラスロード1571(TEL095・822・1571)で。午前9時半~午後6時。

(2017年8月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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