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アートリップ

植木アート 
若宮道男作(熊本県産山村)

大自然の中、にぎやかに

モチーフは、作りやすいという鳥が多い。「ぽつんとしていては寂しいので」つがいにする=桐本マチ子撮影
モチーフは、作りやすいという鳥が多い。「ぽつんとしていては寂しいので」つがいにする=桐本マチ子撮影
モチーフは、作りやすいという鳥が多い。「ぽつんとしていては寂しいので」つがいにする=桐本マチ子撮影 両手を広げた力士や怪獣など、にぎやかだ=桐本マチ子撮影

 「一度通り過ぎたけど、気になってつい戻ってきました」。ツーリング途中の若い男性が熱心に写真を撮っていた。

 ここは、熊本と大分を結ぶ「やまなみハイウェイ」沿いのトウモロコシの売店「ヒゴタイフルーツ」周辺。力士や鳥といったさまざまな形の植木が所狭しと並ぶ。そして、数メートルの高さの「自由の女神」など、くぼ地を隔てた向こう側にもずらり。この「圧巻」の景色に車を止めて撮影する人も多い。

 作者は、阿蘇市でコメ農家を営む若宮道男さん(77)。20年前、副業で売店を出したとき、自宅の庭で作っていた大量の作品を移し、店の周囲に並べた。最初は200体くらいだったが、だんだん増やして、今は700体以上あるという。

 元は亡くなった父親が趣味で作っていた。子どものときに手伝ったことをきっかけに好きになり、今は一人で制作する。

 育てやすいツゲやツツジの苗木を仕入れ、成長するとビニールひもで縛り、大体の形を作る。完成までの年数は、木の成長次第だが、2、3年から数十年かかる。

 成長の早い夏は、1週間に1回、剪定(せんてい)するので忙しい。「大変じゃ。心がちっとゆるんでしまうともうだめ」と若宮さん。「でも写真撮ってくれるから、ちゃんとせな」。意欲も尽きない。今度はキリンに挑戦するそうだ。

(土田ゆかり)

 やまなみハイウェイ

 大分県中部と熊本県阿蘇市を結ぶ県道で、周囲には広大な自然が広がる。大分県にある標高1330メートルの牧ノ戸峠は、久住山の登山口で、少し登ると展望台から山々を見渡せる。また、秋から冬にかけては、蛇越(じゃこし)展望所から見られる由布院盆地を覆う朝霧が美しい。熊本の城山展望所は、正面に阿蘇五岳を望む。秋の早朝には、雲海が見えることもある。

 《作品へのアクセス》阿蘇くまもと空港から車で約1時間半。


ぶらり発見

焼きとうもろこし

 「ヒゴタイフルーツ」(TEL090・4341・1509)は、4月下旬~11月中旬に営業。フルーツのような甘さがあるトウモロコシ「味来(みらい)」の袋詰め(7本1500円)、「焼きとうもろこし」(写真、300円)などを販売する。午前8時~午後5時。

 売店から車で約20分の黒川温泉では、「入湯手形」(1300円、購入日から半年間有効)を購入すると、洞窟風呂や立ち湯などがある25軒の旅館の中から、好みの3軒の湯につかることができる。問い合わせは黒川温泉観光旅館協同組合(0967・44・0076)。

(2017年10月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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