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アートリップ

ぐんま天文台 屋外モニュメント 
磯崎新アトリエ作(群馬県高山村)

「古代遺跡」で天体観測

右端がサムラート・ヤントラ、高さ8・4メートル=安達麻里子撮影
右端がサムラート・ヤントラ、高さ8・4メートル=安達麻里子撮影
右端がサムラート・ヤントラ、高さ8・4メートル=安達麻里子撮影 サムラート・ヤントラの「階段」は北極星を指しており、夜間は目測で天体を観測できる=30分露光、安達麻里子撮影

 満天の星の下、古代遺跡のような建造物群が闇に浮かぶ。辺りを歩くと、異世界に来たような不思議な感覚に陥った。

 群馬県高山村を一望する山の頂。県立ぐんま天文台前の広場には、実際に天体観測に使えるモニュメントが立ち並ぶ。18世紀にインドで建てられた天体観測施設「ジャンタル・マンタル」から、日時計の「サムラート・ヤントラ」、黄道(太陽の通り道)上の12星座に対応した12機の「ラシバラヤ・ヤントラ」を、モダンな外観で再現。その奥には、英国の巨石遺跡ストーンヘンジを独自に解釈・再現した「ストーンサークル」も鎮座する。

 モニュメントは、1999年の天文台の建設と合わせて磯崎新(あらた)アトリエが設計。施設全体を「天文テーマパーク」と位置付け、以前からジャンタル・マンタルのデザインに面白さを見いだしていた磯崎新さん(86)が、モチーフに採用した。「宇宙的なスケールの歴史と時間を感じてほしい」と設計を担当した小杉栄次郎さん(49)。

 日中再び天文台を訪れると、団体客でにぎわい、夜とは違ってのどかな雰囲気。「月から来た」と冗談めかす60代の夫婦は「わくわくする場所」と笑う。試しに日時計の影で時刻を読むと、驚くほど正確だった。基礎工事に気を使い、1分単位の精度を保っているそうだ。空気が澄むこの季節、天体を身近に感じてみては。

(安達麻里子)

 群馬県立ぐんま天文台

 1993年に県人口が200万人を突破したこと、94年に県出身の宇宙飛行士・向井千秋さんが宇宙に飛び立ったことを記念し、99年に建設された。接眼部のある望遠鏡としては世界最大級の150センチ反射望遠鏡や、65センチ反射望遠鏡で星を観望できる(150センチ望遠鏡での観望は夜間のみ、現在メンテナンス中)。屋外モニュメント(晴天時のみ)や望遠鏡の見学ツアーは毎日開催。原則(月)休み。問い合わせは0279・70・5300。

 《アクセス》上越新幹線上毛高原駅から車で25分前後。


ぶらり発見

SPACE FOODたこやき

 天文台1階の売店で、たこ焼きをフリーズドライで宇宙食状にした「SPACE FOODたこやき」(写真、700円)を販売。不思議な食感だが味は本格的。食から宇宙を感じよう。

 草津温泉と並び県を代表する名湯の伊香保温泉は、天文台から車で約30分。中心地・石段街にある365段の石段には、十二支のプレートが設置されている。江戸時代にあった12の温泉宿の場所を示しており、干支(えと)には家紋のような意味があったという。足元に気をつけて探したい。問い合わせは渋川伊香保温泉観光協会(0279・72・3151)。

(2017年10月31日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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