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アートリップ

Animal 2012-01B 
三沢厚彦作(東京都千代田区)

都会の大地を踏みしめて

目を光らせて、こちらをうかがっているようだ=伊ケ崎忍撮影
目を光らせて、こちらをうかがっているようだ=伊ケ崎忍撮影
目を光らせて、こちらをうかがっているようだ=伊ケ崎忍撮影 近くにはシロクマの子どもをモチーフにした作品も=伊ケ崎忍撮影

 高級ブランド店やオフィスビルが立ち並ぶ東京・丸の内仲通り。大きな白トラが、四つ足を踏ん張って歩道に立つ。近寄って金色の瞳をのぞき込むと、次の瞬間襲いかかってくるようで、ドキリとした。

 作者は彫刻家の三沢厚彦さん(55)。等身大の動物をモチーフにした木彫で知られる。「木の塊が、ある瞬間から指令してくるんです。ここを削れ、こっちは張りを出せってね」。その手から生み出される動物たちは、どこか親しみやすい造形だ。「実際の動物と、寓話(ぐうわ)などから人間が抱く『リアリティー』。そのイメージのズレを反映しています」

 白トラは彫刻の森芸術文化財団の依頼で2015年に設置。木彫の作品を業者にブロンズで鋳造してもらい、ウレタン塗料で仕上げた。「垂直方向に伸びるビル街に、動物の形が有機的なリズムを生んでくれました」と財団の坂本浩章さん(51)。

 瞳の金色にはこだわった。「とりまく空間が映り込み、広がりを感じさせる色。能面のように、見る角度や時間によっても表情が変わって見えるでしょう」と三沢さんは笑う。

 師走が迫り、すぐそばにある丸ビルのロビーでは、高さ10メートルを超えるクリスマスツリーが輝く。けれど都会のトラは、お祭りムードなどどこ吹く風とばかりに、しっかり大地を踏みしめていた。

(中村茉莉花)

 丸の内ストリートギャラリー

 1972年、「芸術性豊かな街づくり」を目指し、三菱地所主催で彫刻の森芸術文化財団の協力の下、丸の内仲通りでの彫刻展示をスタート。作品は定期的に入れ替えられ、現在は草間彌生の石彫オブジェやエミリオ・グレコのブロンズ像など計12点が並ぶ。三沢厚彦さんの作品は計3点で、2018年まで展示予定。2013年から、作品を入れた風景写真を募集する「丸の内ストリートギャラリーフォトコンテスト」も行っている。

 《アクセス》東京駅から徒歩3分。


ぶらり発見

「東京 丸の内のはちみつ」

 作品から徒歩3分。新丸ビル地下1階のはちみつ専門店ラベイユ(TEL03・3201・1778)では、丸の内で採れた希少な蜂蜜「東京 丸の内のはちみつ」(写真、36グラム1620円~)を販売している。すっきりとした上品な甘さ。

 丸の内では、クリスマスイベントMarunouchi Bright Christmasを12月25日(月)まで開催中。フラワーアーティストのニコライ・バーグマンが手がけたツリーやオブジェが街を彩る。

(2017年11月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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