読んでたのしい、当たってうれしい。

アートリップ

御堂筋彫刻ストリート 
朝倉響子、ジョルジョ・デ・キリコほか作(大阪市)

名品の数々 歩く目線で

「ジル」は日常の女性のしぐさを表現=滝沢美穂子撮影
「ジル」は日常の女性のしぐさを表現=滝沢美穂子撮影
「ジル」は日常の女性のしぐさを表現=滝沢美穂子撮影 ジョルジョ・デ・キリコ「ヘクテルとアンドロマケ」はギリシャ神話から=滝沢美穂子撮影

 会社員が足早に行き交う平日の御堂筋。視線を感じた先に、すました表情の女性像がこちらを見ていた。プレートには「朝倉響子 ジル」の銘。通りにはほかにもロダン、ジョルジョ・デ・キリコ、高村光太郎らの趣の異なる彫刻合わせて29体が並ぶ。

 これらは、1991年に始まった大阪市と建設省(当時)による、文化的な街づくりを目指した事業「御堂筋彫刻ストリート」の一環。沿道の老舗企業から募った寄付で設置された。

 彫刻の全体テーマは「人間讃歌(さんか)」。一流作家による、人体をモチーフにした作品に限定し、景観を統一するため、高さは台座を含めて2メートル以内に制限した。結果、巨匠たちの裸婦像や着衣像、抽象表現作品が、歩く人々の目線で見られるように並んだ。

 しかし、試練の時代もあった。バブルがはじけ、企業の再編などで周辺ビルには空室が増加。土日になると人通りが少なくなり、放置自転車で彫刻も埋もれた。「存在が忘れられ、誰も評価しなかった」と話すのは、2000年以降の設置審査委員長を務めた、関西学院大名誉教授の加藤晃規さん(71)。

 市が自転車の即時撤去を開始すると、再び名品が姿を現した。現在、周辺にはホテルなどが入る高層ビルが建設中だ。加藤さんは「作品は潤いのある街並みの一つ。にぎわいが戻れば」と目を細めた。

(吉田愛)

 御堂筋

 大阪市の中心地、梅田の阪急百貨店前から南海難波駅前までの約4キロ、道路幅44メートルの国道。1921年にヨーロッパの都市を模して計画され、37年に完成した。一部ではビルの高さを約30メートルにとどめる「百尺制限」を採用。周辺には大阪ガスビルや大丸心斎橋店などが立ち並び、高度経済成長期には金融機関が集った。95年から高さ制限を緩和する箇所もあり、高層ビルも建っている。

 《アクセス》梅田駅、淀屋橋駅、本町駅などからすぐ。


ぶらり発見

たっぷりの有機野菜と玄米の日替わりランチ

 御堂筋沿いの本町には、器の専門店Meetdish(TEL06・6266・6006)がある。陶磁器やガラス、鍛金(たんきん)作品など随時約80人の作家の器が並ぶ。月に1、2回は企画展を開催する。不定休。

 東梅田駅から一駅の中崎町駅周辺には、古民家を改装した美容室やカフェなどが並ぶ。狭い路地を入ったところにあるPUBLIC KITCHEN cafe 中崎町店(TEL6375・7339)では、たっぷりの有機野菜と玄米の日替わりランチ(写真、880円)が味わえる。(月)休み。

(2018年2月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

アートリップの新着記事

新着コラム

  • 美博ノート 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 私のイチオシコレクション カメイ美術館 当館は仙台市に本社をおく商社カメイの第3代社長を務めた亀井文蔵(1924~2011)が半世紀以上かけて収集したチョウをコレクションの柱の一つとし、約4千種、1万4千匹の標本を展示しています。

  • 建モノがたり 本館古勢起屋 (山形県尾花沢市) 川の両岸にレトロな旅館が立ち並ぶ。そんな銀山温泉のイメージを体現する築110年の「本館古勢起屋」は、老朽化などのため約20年ほぼ放置されていた。

  • ななふく浪曲旅日記 浪曲は治療、なら、浪曲師はお医者さん? 朝日新聞のWEBRONZA論座で「ななふく浪曲旅日記」として、連載をさせていただいておりました。浪曲のお仕事でさまざまなところへ旅をする中で感じたことを綴っておりましたのを、装い改めて、こちらで再連載することになりました。どうぞよろしくお願いいたします。