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美博ノート

「霊峰不二」

名山巡礼(古川美術館)

 


美博ノート
1944年 紙本着色 軸装

 

 国土の大半を山地が占める日本列島――。山は常に日本人の生活の中にあり、多くの文学や芸術を生み出す原動力となってきた。今展では、山に魅せられた21人の画家が思い思いに描いた山の姿を紹介する。

 琥珀(こはく)色にかすんだ空に、冠雪した山頂をのぞかせる富士の山。横山大観(1868~1958)の作品だ。

 山頂のくっきりとした描線に比べ、裾野部分は輪郭をぼかして、高い標高と、雲海の上にそびえる雄大な山容を表現している。色彩の濃淡によって空気や光を表す技法「朦朧(もうろう)体」を使って、神々しさをも感じさせるのだ。

 「富士を描くことは自分の心を描くこと。理想をもって描かなければならぬ」と語り、生涯に1500点以上の富士山を描いた大観。本作は、大観のどんな「理想」を映しているのだろうか。

(2017年2月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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