読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

「どくだみ」

日常を綴る 宮脇綾子展(清須市はるひ美術館)

「どくだみ」
制作年不詳

 宮脇綾子(1905~95)はドクダミを愛し、繰り返し作品のモチーフに用いた。

 葉脈や葉の質感を、かすりの模様を使って絶妙に表現している。根の形など、細かい部分の造形もリアルだ。植物の構造を図鑑などで調べ、実物を何度もスケッチするなど徹底的にモチーフと向き合っていたという。

 彼女が一番好きだった布は藍染め。小さいはぎれもたんすに収めて、どこに何が入っているかすべて記憶していた。

 会場には、さしみを取った後のカレイや、カボチャ、畑に植えられたネギなどの作品が並ぶ。彼女は、日々の暮らしに登場する食材などを題材に選んだ。「日常を、こんなにも魅力的にとらえていたのかと驚かされる。視点を変えれば、毎日が楽しくなると教えてくれているようです」と奥村綾乃学芸員。

(2017年11月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

今、あなたにオススメ

美博ノートの新着記事

  • 五十三次 府中 日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか

  • 五十三次 大磯 女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。

  • 三菱十字号 トヨタ博物館「お蔵出し展」

  • トヨタライトバス 「トヨタライトバス」は1963~69年、当時の荒川車体工業(現トヨタ車体)が製造した22人乗りの小型バス。

新着コラム