五十三次 府中
日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか
馬や鳥のような胴体に車輪を付けて転がせるようにした、九州の木製玩具「きじ馬」。「きじ車」と呼ぶ地域もあり、由来は各地で様々だ。最も古いきじ馬の記録は江戸後期と言われる。「山間部で子どもの遊び道具として作られたのが始まりと考えられます。東北のこけしのような存在」と学芸員の岩間千秋さん。
大分県玖珠町(くすまち)の「北山田のきじ馬」は、木地を生かした無彩色の代表格。民芸運動に関わった英国の陶芸家バーナード・リーチが、その素朴な造形美を称賛したという。
「きじ」は「雉(きじ)」の意でも捉えられ、形や彩色が雉に寄せられているものもある。熊本県人吉市の「人吉のきじ馬」や福岡県みやま市の「清水寺のきじ車」などがその例だ。