五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
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久保良撮影 |
黒目がちの大きな瞳。本来は鑑賞者に見られる側であるはずの人形が、あたかも視線をこちらに投げ返しているかのようだ。夢幻的な作品を制作することで知られる人形作家、四谷シモンの代表作だ。
四谷は、唐十郎主宰の劇団「状況劇場」の女形など、俳優として活動する一方で、さまざまなポーズを取れる球体関節を持った人形などを手がける。現代人の記憶や意識を刺激する作風は、フランス文学者の渋澤龍彦や多くの芸術家を魅了した。
この作品は渋澤のコレクションとなり書斎に飾られた。飼い犬にかじられて指先はぼろぼろ。それでも「主体的に語り出さない純粋客体、玩弄物的な存在」(渋澤)として、渋澤の少女論にインスピレーションを与え続けたという。