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私の描くグッとムービー

鈴木マサルさん(テキスタイルデザイナー)
「リストランテの夜」(1996年)

「自分の味」信じて奮闘

 鈴木マサルさん(テキスタイルデザイナー)「リストランテの夜」(1996年)

 

 アメリカでイタリア料理店を経営しているイタリア移民の兄弟、プリモとセコンド。なかなか繁盛しないお店で、一発逆転を狙って2人が奮闘する物語です。

 兄のプリモが、本場の味に誇りを持っていて、妥協しないんですよね。弟のセコンドに「アメリカ人が好むメニューを作ろう」と言われても耳を貸さない。僕も人に言わせると頑固な所があるみたいです。でもきっと、物を作ってる人って多かれ少なかれみんなそう。自分なりに試行錯誤しながら、求められているものと、自分の納得いくものの間で揺れ動いているのだと思う。

 プリモが作る料理は、どれもすごくおいしそう。豪華っていうわけでもないんだけど、才気にあふれていて。パスタとソースが詰まったティンパーノ(イラスト中央)、食べてみたいなぁなんて思いながら、絵を描きました。

 喧嘩(けんか)ばかりの兄弟だけど、最後、セコンドが金持ちの同業者パスカルに向かって、「お前に兄の才能が分かるか」と怒鳴る場面がすごくいい。同じような熱量で考えてくれる相手がそばにいるって、幸せなこと。苦労は絶えないけれど、時にはぶつかり合いながらも、2人は道を模索していくんじゃないかな。続けていけば、物事は少しずつよくなるはず。

 初めて見たのは20年前。仕事がうまくいかない時期に、気晴らしにとレンタルしたんです。サクセスストーリーではないけれど、不思議と前向きな気持ちになれた映画です。

聞き手・中村茉莉花

 

  監督=スタンリー・トゥッチ、キャンベル・スコット
   製作=米
   出演=スタンリー・トゥッチ、トニー・シャルーブほか
すずき・まさる
 1968年生まれ。テキスタイルブランドOTTAIPNU主宰。作品集「鈴木マサルのテキスタイル」(誠文堂新光社)を販売中。
(2016年11月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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