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私の描くグッとムービー

進藤やす子さん(イラストレーター)
「ビフォア・サンライズ 恋人までの
距離(ディスタンス)」(1995年)

恋する男女の会話 止まらない

 進藤やす子さん(イラストレーター)「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)」(1995年)

 

 男女の一夜限りの恋を、まるでドキュメンタリーのように描いた作品です。アメリカ人の青年ジェシーとフランス人の女子大生セリーヌは列車内で偶然出会い、意気投合します。一緒に途中下車し、ウィーンの街を散策することに。

 この2人、一晩中しゃべっているんです。たわいない話から昔の恋愛話、哲学的な話まで。会話が知的で面白いので全然飽きません。美大生の頃に見て、ジュリー・デルピー演じるセリーヌの美しさと強さに憧れました。イーサン・ホーク演じるジェシーが語ったテレビの企画案に対し、優しい笑みを浮かべて「誰も見ないわ」と一言。自分の意見を言うのがかっこいい。ジェシーが割と押され気味なのもかわいくて。夢見がちな男性とそれをいさめる女性の姿がリアルです。

 3部作ある中で1作目のこれが一番好き。見知らぬ人と一緒に電車を降りるなんて無鉄砲だけど、本当は誰もが憧れているシチュエーションなんじゃないかな。街をあてどもなくさまようのも旅らしくていい。ネットが普及した今は、行き先やお店の評価などを調べがちですよね。私もスマホをしばらく手放して、面白いものを見つける「カン」や知的な会話力を磨きたいものです。

 朝にはそれぞれの生活へ帰らなければならない2人は、最後にある約束を交わします。恋のゆくえは続編2作へ。相変わらずリアリティーのある2人の会話、ずっと聞き続けていたいです。

聞き手・星亜里紗

 

  監督・共同脚本=リチャード・リンクレイター
   製作=米
   出演=イーサン・ホーク、ジュリー・デルピーほか
しんどう・やすこ
 1974年生まれ。女性誌や広告などのイラストを手がける。近著に「進藤やす子の鉄板コーディネート」(宝島社)。
(2016年12月2日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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