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私の描くグッとムービー

小林孝亘さん(画家)
「海辺のポーリーヌ」(1983年)

夏の休暇 恋のいざこざ

小林孝亘さん(画家)「海辺のポーリーヌ」(1983年)

 「山と海、どちらが好きか」って聞かれたら、「海」ですね。季節は、寒いより、暑い方が好き。一年中暑いタイのバンコクにアトリエを構えて15年暮らしたほどの「南志向」です。「海辺のポーリーヌ」の舞台も、フランス・ノルマンディー地方の夏の海辺。15歳の少女ポーリーヌと、年長のいとこマリオンが、休暇を海辺の別荘で過ごす。そこで出会った男性たちとの恋を描いています。

 最も僕の目に焼き付いているのは、別荘の門が映し出されるシーン。オープニングでは、ポーリーヌとマリオンが別荘に着いて門を開け、新しい世界へ入っていく。多少の恋のいざこざはあるけれど、2人の状況はそれほど変わらず時が過ぎ、エンディングでは門を閉めて日常へ戻っていく。最初と最後で「門」が意識的に使われています。

 光の微妙な変化を取り入れる演出もいいですね。序盤はあまり感じない日差しの印象が、話が進むにつれて強くなっていく。僕の作品にとっても光は重要なテーマ。最近は、早朝や夕方のやわらかな日の光にひかれます。

 画家である僕の仕事は、自分が納得できる形になるまで描き続けることの繰り返し。それでも答えは分からないから、今でも描き続けている。ポーリーヌたちは、昼は海に行き、夜は皆で語り合う日々を繰り返します。価値観はそれぞれ違うので、語り合っても答えが出るわけではないんですが。分からないからこそ、話をするんです。

聞き手・笹木菜々子

 

  監督・脚本=エリック・ロメール
  製作=仏
  出演=アマンダ・ラングレ、アリエル・ドンバールほか
こばやし・たかのぶ
 具象的な絵画を描く。武蔵野美大油絵学科の特任教授。著書に「ふつうの暮らし、あたりまえの絵」(求龍堂)など。
(2018年5月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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