読んでたのしい、当たってうれしい。

目利きのイチオシコレクション

恐竜化石【上】 国立科学博物館

多様な生態を一室で比較

トリケラトプス 白亜紀後期
トリケラトプス 白亜紀後期
トリケラトプス 白亜紀後期 アパトサウルス ジュラ紀後期

 もうすぐ夏休み。自由研究におすすめなのが、今から約6600万年前の白亜紀後期に絶滅したといわれる恐竜の化石です。化石は、はるか昔に恐竜が実在したという証しで、生きていた当時の様子を知る手がかりになります。

 僕が恐竜に興味を持ったきっかけは、6歳の時に見た国立科学博物館の恐竜化石でした。同館では、二足歩行で肉食が多い獣脚類や、四足歩行で草食の竜脚類など、多様な恐竜の姿を一室で比較して見ることができます。ティラノサウルスが、トリケラトプスを待ち伏せするように向かい合ったレプリカに目を奪われますが、おすすめは横たわったトリケラトプスの実物化石です。断片的な骨の化石が見つかることが多い中、全身の関節がほぼつながった状態で発掘された全身骨格は世界でもまれです。

 恐竜時代の最後を代表する角竜類の一種で、1993年、米ノースダコタ州で発見されました。全長は約6メートル、尾の一部以外はすべて実物化石です。これまでは完全な前脚の骨格が見つかっていなかったため、様々な姿で復元されていましたが、この化石の発見により、前脚は甲の部分を外側に向け、親指から中指で体を支えていたことが分かりました。

 全長約18メートルのアパトサウルスも実物化石です。複雑な首の骨に注目してみてください。

(聞き手・根津香菜子)


 どんなコレクション?

 恐竜化石はステゴサウルスやヒパクロサウルスなど13種14体のうち、9体が実物化石を含む。パキケファロサウルスの頭骨なども展示している。国立科学博物館の創立は1877年。地球や生命、科学技術の歴史を調査・研究するために収集したコレクションは450万点を超える。

 トリケラトプスとアパトサウルスは、いずれも同館の地球館地下1階で常設展示。

《国立科学博物館》 東京都台東区上野公園7の20。午前9時~午後5時(9月までの(金)(土)は9時まで。入館は30分前まで)。620円。(月)((祝)の場合は翌日)休み。7月19日~9月3日は無休。問い合わせは03・5777・8600。

田中真士さん

恐竜専門サイエンスコミュニケーター 恐竜くん

本名・田中真士(たなか・まさし) 16歳でカナダに渡り、アルバータ大学で古生物学を中心に学ぶ。恐竜展の企画・監修を務めるほか、テレビやラジオに出演。著書に「知識ゼロからの恐竜入門」。

(2017年7月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

今、あなたにオススメ

目利きのイチオシコレクションの新着記事

  • 漆芸【下】 東京国立近代美術館工芸館 江戸時代まで漆芸は、寺院や大名の注文を受け、職人が分業で制作していましたが、明治になると、作り手が自ら発想し、全工程を手がける作家活動が盛んになります。

  • 漆芸【上】 首里城公園 漆芸は、漆の樹液を塗料として用い、金や貝で装飾を施す美術工芸品です。漆の木は、日本から東南アジアまでのモンスーン地帯にのみ生育します。

  • 色絵【下】 石川県九谷焼美術館 今回は、色絵の中でも「再興九谷」に焦点を当てて紹介します。

  • 色絵【上】 戸栗美術館 色絵は陶磁器に赤や緑、黄などで上絵付けし、低温で焼成した焼き物の総称です。中国様式を踏襲し、日本では1640年代以降、有田の伊万里焼や、京都の京焼など各地で盛んに作られました。

新着コラム