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街の十八番

小林硝子工芸所@深川

大橋巨泉氏の祖父から技継承

作業台の前に座る小林淑郎さん(奥)と息子で4代目の昂平さん。壁には代々使われてきたダイヤモンドホイールが並ぶ
作業台の前に座る小林淑郎さん(奥)と息子で4代目の昂平さん。壁には代々使われてきたダイヤモンドホイールが並ぶ
作業台の前に座る小林淑郎さん(奥)と息子で4代目の昂平さん。壁には代々使われてきたダイヤモンドホイールが並ぶ グラス1万6200円~。制作時間は1個につき約3時間

 「水の都」とも呼ばれる運河の町、深川。船が行き交い町工場が立ち並び、ものづくりの町として栄えてきた。今も、江戸切子(きりこ)職人約100人の7割が周辺に集う。

 江戸切子は1830年代、西洋のカット技法を手本に始まったとされる。割り出しという工程で印を付け、ダイヤモンドホイール(円形切削工具)でガラスを削って文様をつくる。文様は菊や麻の葉など伝統的な十数種のみ。職人が独自のセンスで組み合わせる。

 1908(明治41)年、大橋巨泉さんの祖父、徳松に初代菊一郎が弟子入りしたのを創業の起点とする。徳松には後継者がなく、技術は小林硝子(ガラス)が引き継いだ。

 だが、伝統工芸で食べていくには厳しい現代。3代目の小林淑郎(よしろう)さん(67)は継がせるつもりはなかったが、息子の昂平(こうへい)さん(30)が大学在学中に後継を申し出た。「作家性が高い」と父に言わしめる4代目は、ガラスのアクセサリー作りなどで間口を広げている。父からの唯一の教えは「品(ひん)のあるものを作りなさい」。昂平さんは「自分なりの品(ひん)を模索中です」。

(文・写真 星亜里紗)


 ◆東京都江東区猿江2の9の6(TEL03・3631・6457)。切子教室は月4回で1万円(毎週月曜または土曜、2時間)。材料費別。住吉駅。

(2017年5月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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