水戸元祖 天狗納豆@水戸
茨城といえば納豆というイメージをつくったのが水戸の「天狗(てんぐ)納豆」。
三味線屋などが並び風情ある甘酒横丁。店を構えたのは明治初期だ。中に入ると、漆科の植物から取った「カシュー漆」や柿渋などの独特のにおいがした。「僕はこのにおいで育ったようなもの」と4代目の岩井良一さん(67)。
新潟、茨城、埼玉の竹職人が編んだ竹かごに埼玉県小川町産の和紙を貼る。擦れやすい角には、古道具屋から仕入れた古い蚊帳をほどいた生地で補強。防虫、防かび効果のある柿渋で下塗りした後、カシュー漆を塗る。塗りは一番根気を要し、神経を使うところだ。「父のようにはいまだにすっきりしないねえ」
着物の収納箱として欠かせなかったつづらだが、生活様式の変化で注文は減少。しかし、近年の着物ブームで若い客が増えてきた。
「後継者」もできた。約10年前、客として来た高橋諭さん(39)に弟子入りを請われ「竹かごから作れた方がいい」と助言。今、高橋さんは店で扱う大きい竹かごを作り、週末に、つづら作りを学ぶ。「いずれライバルだよ」と岩井さんはうれしそうだった。
(文・写真 土田ゆかり)
◆東京都中央区日本橋人形町2の10の1(TEL03・3668・6058)。午前9時~午後7時。(日)(祝)休み。人形町駅。