読んでたのしい、当たってうれしい。

街の十八番

金子屋@神奈川・伊勢原

子どもが喜ぶ小さな大山こま

大山こまを磨く金子さん。赤、藍、紫の3色で構成されている
大山こまを磨く金子さん。赤、藍、紫の3色で構成されている
大山こまを磨く金子さん。赤、藍、紫の3色で構成されている 芯棒が太くよく回ることからお金が回るといわれる。直径3センチ(450円)~12センチ(3600円)の10種を作る

 神奈川県伊勢原市の大山(おおやま)(標高1252メートル)。大山阿夫利神社へ向かうこま参道の一角に金子屋がある。江戸時代中期から続く大山こまを扱う土産物店だ。「当時は大山参りが盛ん。お椀(わん)などを作る木地師が土産に大山こまを作った」と話すのは8代目の金子吉延さん(68)。材料である広葉樹のミズキ探し、製材、成形、彩色を1人で担う。

 大学卒業後、小田原で木地師として基礎を身につけ、3年後に実家の大山に戻り、こま作りを始めた。技は他の職人から目で盗むのが基本。修業中の昼休みには、道具にもこだわり、熱心に刃物を研究した。2階の工房には、自作した刃物がずらりと並ぶ。木材や自分の手に合わせ、6種以上の刃物で木を削る。

 現在、大山こまの職人は金子さんを含めて5人いる。約40年携わる金子さんは、中でも一番の若手。直径3センチの小さいこまが得意だ。通常、ろくろで作るこまだが、木工用旋盤を導入することで、早く作れるようにした。子どもに喜んでもらいたい、その思いがこま作りを支えている。

(文・写真 佐藤直子)


 ◆神奈川県伊勢原市大山585(TEL0463・95・2262)。午前8時~午後5時。無休。伊勢原駅からバス。

(2018年8月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

街の十八番の新着記事

  • 水戸元祖 天狗納豆@水戸 茨城といえば納豆というイメージをつくったのが水戸の「天狗(てんぐ)納豆」。

  • 大和屋@日本橋 東京・日本橋、三越前に店を構えるかつお節専門店。江戸末期、新潟出身の初代が、魚河岸のあった日本橋で商いを始めた。

  • 佐野造船所@東京・潮見 水都・江戸で物流を担ったのは木造船だった。かつて、和船をつくっていた船大工は今はほとんど姿を消した。佐野造船所は、船大工の職人技を代々受け継ぎながら生き延びてきた。

  • 天真正伝香取神道流本部道場@千葉・香取 「エイ」「ヤー!」。勇ましいかけ声と木刀の打ち合う音が響く。千葉県香取市、香取神宮のほど近く。約600年連綿と伝えられてきた古武術、天真正伝(しょうでん)香取神道流の本部道場だ。

新着コラム