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ひとえきがたり

十三(じゅうそう)駅(大阪府、阪急電鉄)

名物横丁 復興へ一歩

小豆色の電車が行き交う駅沿いに空き地(上部)が広がる。十数店舗が周辺で営業を再開した=大阪市淀川区十三東
小豆色の電車が行き交う駅沿いに空き地(上部)が広がる。十数店舗が周辺で営業を再開した=大阪市淀川区十三東
小豆色の電車が行き交う駅沿いに空き地(上部)が広がる。十数店舗が周辺で営業を再開した=大阪市淀川区十三東 地図

 阪急の要の駅だ。神戸線、宝塚線、京都線が分岐し、1日7万人の乗降客が行き交う。西と東の改札口周辺は北大阪有数の繁華街となっている。

 しかし今、西改札口の前には工事用フェンスが視界を遮るように高く立つ。中にはテニスコート6面分、約1500平方メートルの更地が広がる。昨年3月に発生した火災で、商店会「十三トミータウン」の39店舗が焼けた跡地だ。

 かつては居酒屋やスナックが軒を連ね、夕方には改札口を出た勤め人が赤ちょうちんに消えた。戦後、大阪市有地にバラックの店が乱立したのが発祥で、昭和の風情を色濃く残し、「ションベン横丁」の名で親しまれていた。

 創業54年の焼き肉店「請来(ちんらい)軒」の2代目店主、藤井正人さん(47)は、秘伝のタレを焼失した。茫然自失(ぼうぜんじしつ)となっていたが、焼け跡で両親の代から使っていた1枚のタレ皿が無傷で見つかり、再起を決意。火災から2カ月後の母親の誕生日に、300メートル離れた場所で営業を再開した。「ピンチをチャンスに変えたい」

 商店会は市民からの寄付金など約4800万円を集め、昨年夏までにがれきを撤去。更地の未来像について借地権者らの話し合いが進んでいる。駅舎沿いの幅約2・5メートルの路地は、今の建築基準に合わせて4メートルに拡幅する。一角を商業ビルにする構想もある。

 阪急の関係者は「早くにぎやかさが戻ってほしい」と話す。復興に向けた「商店会まちづくり憲章」にはこう記されている。「北大阪の玄関口としてふさわしいまちをつくります」

文 曽根牧子撮影 桐本マチコ 

 沿線ぶらり  

 十三駅は阪急神戸線(梅田駅~神戸三宮駅)、宝塚線(梅田駅~宝塚駅)、京都線(十三駅~河原町駅)の3線が交わり、4面6線のホームがある。

 8月8日(土)午後7時50分、駅から徒歩15分の淀川河川敷でなにわ淀川花火大会が開催される。問い合わせは運営委員会(06・6307・7765、自動音声案内)。荒天中止。

 神戸線のお隣の神崎川駅からすぐの三津屋商店街は、カーリングを参考にやかんをストーンに見立てたヤカーリングの発祥の地。8月29日(土)、落語家の笑福亭仁勇を司会に招き、18回目となる世界大会が開かれる。問い合わせは事務局(6303・9211)。

 

興味津々
ポテそば・うどん

 十三駅の2・3号(番)線ホームにある「阪急そば若菜」では、フライドポテトをトッピングするポテそば・うどん(370円)が人気。2月に販売開始後、1カ月で3千食が売れた。

(2015年7月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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